北信越/軽油価格下落も… 荷主、運賃下げ求めず
物流企業
2015/07/23 0:00
【新潟】北陸信越方面の荷主と運送会社の関係が微妙に変化している。現在の軽油価格は、2014年の同時期に比べて1リットル当たり30円ほど下がっているが、燃料サーチャージ制をストレートに適用し、荷主から運賃値下げを求められた事業者は意外と少ない。昨年、軽油や諸費用の高騰により運賃ベースを上げた運送会社も、今年の軽油が値下がり傾向であるにもかかわらず運賃ダウンを言い渡されていない。これまで、荷主は景気変動や人件費アップ、原材料費の高騰など様々なコストアップ要因に対して敏感に反応し、「理不尽」と批判されるほど強引な運賃値下げを突き付けてきた。それが今、鳴りを潜めている。荷主と運送会社の間に、一体何が起きているのか。(俵箭秀樹) リーマン・ショックが起きた08年後半まで、軽油価格はこれまで経験したことのない高騰を続け、資源エネルギー庁の石油製品価格調査によると、同年8月4日に167.4円のピークを記録した。 全ト協の年度別軽油価格平均(新潟・北陸信越)でも、ローリー単価は1990年代に60円前後で推移していた。しかし、2000年度の63.89円を皮切りに、05年度83.08円、東日本大震災のあった11年度以降は100円台で高止まりし、14年度は106.87円だった。 全ト協の導入事例に掲載された企業の燃料サーチャージ基準価格65〜70円なら、上昇額36〜41円のサーチャージ分を受け取ったことになる。 そして、新潟県トラック協会(小林和男会長)の県内軽油価格調査情報によると、5月は91.85円であり、サーチャージ分は大幅減となる。 ところが、実際の運賃は、今年の軽油安でも値下がりしていない運送会社がある。 河島運輸(富山県射水市)の河島節郎社長(65)は「軽油価格は昨年より安いが、運賃の値引きを求める荷主はいない。消費増税前の昨年2、3月に車両不足で大変苦労したので、荷主にも人手不足の状況は十分理解されている。少しでも高い運賃で運送会社をつなぎ留めておきたいという思惑があるからだ」と推測する。 荒木運輸(同)の荒木一義社長(45)も「昨年は人手不足を理由に、運賃ベースで値上げしてもらったため、今年は軽油安でも運賃の値下げは無い」と話す。 これまで、荷主は自身の収支を第一に考え、理不尽と言わざるを得ないほどの運賃値下げを迫ってきた。しかし、トラック業界の深刻な人手不足と消費増税前の駆け込み需要という要因が重なり、自社の荷物を運べなくなりそうな危機に直面、一転して囲い込みに動き始めている。 新潟市中央区の老舗運送会社のオーナー(74)は「運賃はこれ以上下げられないレベル。軽油価格が下がっても運賃値下げを言える荷主はいない」と指摘。 2月の軽油価格は84.97円で底値を打ったものの、昨年の運賃に据え置かれている千曲運輸(長野県小諸市)の中島剛登社長(46)は、「価格が下がれば、こちらから率先して、運賃から燃料サーチャージ分を下げる提案を行う。軽油価格の変動に合わせて機能させることが、燃料サーチャージ制を生かすことにつながる」と考えている。 北信越の主要荷主や物流子会社によって、軽油安以降の対応は分かれる。 北越紀州製紙では「サーチャージは、軽油価格が上がれば運賃も上げて、下がれば下げるのが原則。ただ、トラック業界は人手不足、長時間労働といった課題を抱えているので、軽油の値下がりには適用していない。むしろ、運賃ベースをアップした」としている。 一方、海上貨物の取り扱いが多いリンコーコーポレーションの物流子会社、リンコー運輸(玉木国男社長、新潟市東区)では「軽油価格が100円以下になったらサーチャージの適用を休止する約束がある。一方、一般荷主のサーチャージ減額分を協力会社に、ストレートに適用すると過酷な運賃になるので、当社が少し肩代わりしている」と、制度通りに運用できない難しさもある。 燃料サーチャージの届け出件数が3月末時点で5074件、届け出率は全事業者の8%に過ぎない。 【写真=軽油価格は昨年より安いものの、再び値上がり傾向にある(イメージ写真)】