道交法改正案が成立 「準中型」17年春にも
行政
2015/06/15 0:00
11日の衆院本会議で、車両総重量3.5トン以上、7.5トン未満の貨物自動車を対象とした「準中型自動車免許」の新設を盛り込んだ道路交通法改正案が可決、成立した。公布から2年以内に施行する――と規定しており、順調にいけば、2017年春に制度がスタートする見通し。18歳から取得でき、高校新卒のトラック業界への就業促進に期待が掛かる。(田中信也) 道交法の改正は、準中型免許の新設と、75歳以上の高齢運転者に対する臨時の認知機能検査及び講習制度の導入が趣旨。4月17日に参院を通過し、6月10日には衆院内閣委員会(井上信治委員長)で了承、衆院本会議に上程された。井上委員長が法案の趣旨と審議経過を報告した後に採決が行われ、可決した。 準中型免許は、小型貨物車両に限定した新区分として新設。トラック業界に従事する若年者が不足する中、コンビニエンスストアなどへの集配車を運転するドライバーの確保や、高校を卒業して間もない若年者の雇用条件に配慮し、普通免許取得の有無にかかわらず、18歳から取得できるようにする。 また、貨物自動車の交通事故は全件数の33%(13年)を占めており、特に総重量3.5〜5トンの車両の事故減少率が低い。こうした状況を受け、貨物自動車での試験・取得時講習など免許制度上の安全対策を義務付けている。 衆院内閣委では、高齢者への認知症検査と講習制度に質問が集中した。準中型免許に関しては「自動車学校や都道府県の免許センターなどの現場が混乱しないよう、車両やシステム、カリキュラムなど環境整備に努めるべき」(河野正美氏、維新)、「トラック業界の労働力不足が解消されるよう、しっかり周知して欲しい」(佐々木隆博氏、民主)といった注文が付けられた以外は、質疑が淡々と進行。採決の結果、全会一致で了承した。 また、準中型免許取得者を対象とした教習について、「交通死亡事故件数に占める16〜24歳の割合が高い」ことを踏まえ、指定自動車教習所などと連携し、安全性確保に十分かつ効果的な措置を講じるよう付帯決議した。 併せて、参院内閣委員会(大島九州男委員長)での「準中型取得者が乗用車など3.5トン未満の車両を運転する際、初心運転者標識(初心者マーク)の表示の義務付けが無く、周囲の車に対する保護義務も無い」との指摘を踏まえ、衆院内閣委でも施行後の事故発生状況を考慮し、速やかに必要な見直しを行うことを条件とした。 改正案の成立を受け、全日本トラック協会(星野良三会長)は11日、「若年運転者雇用の観点から、中型免許制度の見直しを長年にわたり要望してきた。今回、準中型免許の導入が実現することとなり、警察庁、国土交通省などの関係行政機関、全国高等学校長協会(宮本久也会長)など関係各者の尽力に感謝する。準中型免許制度を積極的に活用し、若者の雇用促進と輸送力の安定供給に努めるとともに、一層の交通安全対策を推進していく」とコメントした。 更に、高校新卒の就業機会拡大の観点から、全高長と共に普通免許の範囲拡大などの要望活動を展開してきた全国工業高等学校長協会(棟方克夫理事長)の滝上文雄事務局長も、同日の本紙取材に対し「今回の改正で、若年者の運輸業界への門戸が広がった。しかし、トラック業界にとっては事故防止に対する責任が更に重くなったと言える。事故を未然に防ぐための労働条件の整備、運転技術研修の充実を関係団体に期待したい」と述べた。 【写真=11日の衆院本会議で可決】