国交省ヒアリング/過疎地の物流ネット、高齢者見守り効果大
行政
2015/06/11 0:00
国土交通省は8日、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会の物流小委員会(根本敏則委員長、一橋大学大学院教授)と交通政策審議会交通体系分科会物流部会の物流サービス小委員会(苦瀬博仁委員長、流通経済大学教授)の合同会議を開き、過疎地での物流ネットワーク構築について、ヤマト運輸(長尾裕社長、東京都中央区)、日本郵便(JP、高橋亨社長、千代田区)、高知県の関係者に対しヒアリングした。地域の活性化や、高齢者の見守り支援など効果は大きいものの、収益性や地域固有のニーズへの対応が課題として浮き彫りになった。(田中信也) まず、高知県の鎌倉昭浩・産業振興部副部長(中山間対策担当)が、買物代行や配達、移動店舗といった過疎地での生活用品確保に向けた市町村などの取り組みに対する助成事業を説明した。 大豊町と大豊町商工会、ヤマト運輸が連携して行っている、地元商店の商品配達と併せて、高齢者の見守りを宅配便のドライバーが行うサービスの概要を報告。住民にとって利便性の向上と安全・安心の確保、地元商店には利用の促進と配達コストの低減、宅配業者にとっても物量の増加、配達の効率化などにメリットがある――としている。 ヤマト運輸の成保達雄・営業戦略部地域・生活支援推進課長は、大豊町のケースのほか、青森県黒石市での市の定期刊行物の配達による独居高齢者定期訪問、山口県周南市で実施している道の駅への農産物の納品代行を紹介。 見守りに対しては、自治体が「訪問時に異変があった場合、タイムリーに報告をもらえるのでありがたい」「圧倒的な訪問数の多さが孤独死のけん制につながる」と評価。高齢者自身からも「顔なじみのサービスドライバーが配達に来るので安心できる」「会話が増えてうれしい」といった感謝の声が上がっている。 一方、セールスドライバーにとっては、地域貢献と、高齢者の生きがいや生命に関わる仕事を担っていることで「責任感とやりがいを感じる」など意識向上につながっている。 こうした取り組みを推進するに当たっては①地域の生活基盤の一部となるモデルの構築②補助金に依存せず、継続的にサービスを提供できる収益の確保③規制緩和・特区の有効活用――を課題に挙げた。 JPの関祥之・郵便・物流商品サービス企画部長は、離島での宅配ネットワークの現況について報告した。 委員との質疑では、サービスの維持が可能な収益性の確保、物流事業者間や他の輸送モード、サービスとの連携、生活用品確保への住民ニーズなどに関する質問が上がった。 ヤマトの成保氏は「本業(宅急便)の範囲で出来ることが基本だが、自治体側がもう一歩踏み込んで(事業を進めて)いくならば、宅急便ネットワークとは切り離すことも考えられる」と提示。ただ、事業を途中で断念することは最も避けなければならないため「採算ラインを探しながら事業を進めたい」とした。 JPの関氏は事業者間の連携について、過疎地の物流対策としてヤマト運輸、佐川急便(荒木秀夫社長、京都市南区)と「共同配送の仕組みを検討中」とした上で、「各社で異なるサービスレベルや取扱量の問題をクリアし、いかに効率化するかが課題」と指摘。 高知県の鎌倉氏は「生活用品確保で配達を実施することもあれば、移動店舗での販売で対応することもあるなど、市町村で温度差がある」とし、一つのプラットホームを構築することの難しさについて言及した。 【写真=地域の活性化などについての報告後、質疑を実施】