尾張陸運、倉庫業へ本格進出 キャッシュフロー経営推進
物流企業
2015/06/01 0:00
【愛知】尾張陸運(伊藤敏彦社長、愛知県尾張旭市)は、地場を中心にトラック95台を運用する。2014年12月には、日進市で敷地面積1万8400平方メートル、鉄骨造り4階建ての名古屋東物流センター(日進市)を購入。営業倉庫の免許を申請し、本格的に倉庫事業への進出を果たした。 自社で運用する物件は、本社横と名古屋東物流センターの2カ所。今後は、年1億5千万円のキャッシュフローを生かし、3年以内に愛知県の西部と岐阜県にセンターを構え、総床面積6万6千平方メートルの保有を目指す。輸送と倉庫を合わせた全体の売り上げを、現在の15億円から倍増の30億円に引き上げる。 キャッシュフローを重視した経営の中で、物流施設やトラックへの投資は惜しまない一方、M&A(合併・買収)や遠隔地への進出は考えていない。「地場と近隣県に定着することが、輸送と倉庫の相乗効果を生む」(伊藤社長、55 ) 実運送は、90%が他の運送事業者からの下請けだが、1社当たりの売り上げは5%程度で、輸送量の波動によるリスクを避けている。 伊藤氏は「直荷主を持つと管理費や有事の備えなどへの負担が大きく、撤退する場合も時間とコストが掛かる。一方で、同業他社の下請けで仕事をすれば、その分の負担が低く、ローコストオペレーションとなり、利益は変わらない」と言う。 安い運賃を提示された場合は、その価格で請け負った上で、反対に自社から出す仕事を同じ価格で提示するなどの工夫で対応している。 伊藤氏の思いは「CS(顧客満足度)よりまず、ES(従業員満足度)」。給与を高くすることで社内の士気を上げ、自発的なやる気を促す。今年の目標は、2トンから中・大型車両まで幅広く保有する中で、勤続5年以上の全ドライバーの平均給与を420万円以上とすること。企業の成長は人材育成と位置付け、セミナーや勉強会の予算は年間500万円を計上する。 「社是の『物心の充実』に向けて従業員の満足度アップには、管理職の教育やドライバーの確保も重要だ。低金利で不動産への投資は有利だが、円安で将来は見えにくい。幸い、会社が大きくなることにより、若いドライバーが集まるようになってきた。今後もキャッシュフロー経営と人材教育に力を入れ、ESを高めていきたい」(梅本誠治) 【写真=敷地面積1万8400平方メートル、鉄骨造り4階建ての名古屋東物流センター】