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北陸信越/運送会社の点呼状況、出発に立ち会わず 体制不備浮き彫り

物流企業

2015/05/14 0:00

 【新潟】北陸信越地域の運送会社の点呼状況は、全国に比べて非常に悪い――とトラック業界関係者から指摘されている。運送事業者にとって、点呼は安全運行を確保する上で最も重要な事項の一つだ。全国の適正化事業実施機関が行った巡回指導の結果によると、点呼指摘件数はワースト3位にとどまった。ところが、新潟や長野の適正化機関が行った県単位の集計では、共にワースト1位。大手運送会社では、対面点呼の体制が十分に構築されているものの、中小は法令通りの点呼体制を敷けない状況だ。このような北陸信越地域の事業者の現状を探った。(俵箭秀樹)  新潟県貨物自動車運送適正化事業実施機関(小林和男本部長)がまとめた2014年度の適正化事業巡回指導実施状況では「点呼の実施及びその記録、保存は適正か」の調査件数429件のうち「否」が95件(22.1%)で、ワースト1位。長野県貨物自動車運送適正化事業実施機関(岩下勝美本部長)の14年度適正化事業・指導項目別調査結果でも同事項の件数381件のうち「否」は84件(22.0%)あり、長野もワースト1位だった。富山県はワースト6位となっている。  新潟適正化機関では、不適正点呼95件を更に調査(重複集計)している。  1位が「点呼時期不適」41件。出発時や到着時などの正しいタイミングで点呼せず、早朝出発の点呼を前日実施、あるいは深夜・早朝到着の点呼を後日行うなど、運行管理者が出発・到着に立ち会わない実態が浮き彫りになった。  2位は点呼時の「指示事項無し」30件。更に、点呼そのものを実施していなかったり、社長や運行管理者が出発・到着時に事務所に不在のため、電話点呼で済ませるケースなどが続く。ドライバー自身が点呼を行う自己点呼のように、点呼の目的から逸脱している事例もある。  点呼を軽視する運送事業者が多い中で、寒川運送(板垣貞芳社長、新潟県村上市)は、専任運行管理者4人、補助者4人の計8人体制を敷く。平日はもとより、土曜、日曜、祝日も24時間の点呼体制だ。  板垣社長(51)は「十分な対面点呼を行い、ドライバーの健康を見極めた上でコミュニケーションを図ることは、大きな事故抑止力になる。このための人件費の負担は重い。しかし、事故防止によるコスト削減、安全運行への信頼アップによるメリットの方が大きい」と動機を語る。  このほか、点呼不適の件数に反して、平日・土日祝日の点呼体制を完備している運送会社は多い。  IT(情報技術)点呼は北陸信越管内で現在、新潟23社、長野25社、富山17社と少なく、点呼実施率向上の切り札とはなっていない。  中越通運(中山和郎社長、新潟市中央区)は、IT点呼の拠点を新発田営業所(聖籠町)に設置し、11店所間で展開。坂井郁雄氏(62)が専任運行管理者として午後9時半から翌午前7時まで常駐しており、平日は47~63人の点呼に対応している。  IT点呼機器を販売する北越アローサービス(東区)の佐藤聡社長(62)は「IT点呼機器は依然高価だが、点呼担当者の人件費削減の効果は大きい」と推薦する。  一方で、河島運輸(河島節郎社長、富山県射水市)では、安全性優良事業所認定(Gマーク)を取得する代わりに、品質管理の国際規格ISO9001を取得。しかし、ISOでは、IT点呼が許可されておらず、河島社長(65)は「ISO取得の店所にもIT点呼を認めて欲しい」と要望する。  また、北陸信越管内の共同点呼実施件数は4月末時点で、わずか2件にとどまる。  あいち経営コンサルタント(名古屋市中区)の和田康宏社長(43)は「乗務前点呼が完全に実施できれば、ドライバーのレベルアップにつながる。経営者との関係も良くなり、労働基準監督署に内部通報されるケースは減少する。定年後の高齢ドライバーを朝の点呼者に採用して体制を整えるべき」と提案。  元警察署長で安全管理やすらぎコンサルタント(富山市)代表の孫田文夫氏(66)も「点呼は事故防止の第一歩で、ドライバーと運行管理者がコミュニケーションを取る最高のチャンス。安全のためには人件費を負担してでも、点呼体制を整備するべきだ。運賃アップや行政の指導も必要だが、経営者の意識改革こそ喫緊の課題」と指摘する。 【写真=点呼体制を整備する運送会社もある(対面点呼を実施する河島運輸=上、IT点呼を行う中越通運=下)】





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