国交省、行政処分「見直さず」 自動車局安政課長「ほくうんはレアケース」
行政
2015/04/27 0:00
国土交通省の小林豊・自動車局安全政策課長(46)は、重大違反で30日間の即刻事業停止になる行政処分基準の厳格化をきっかけに、トラック業界から改善基準告示の見直しを求める意見が出ていることについて、「即刻事業停止が適用されたのは、かなり悪質なレアケース」と述べ、処分基準を見直す可能性がほぼ無いことを強調した。(田中信也) 22日、専門紙記者などによる共同インタビューで明らかにした。即刻事業停止は、2014年1月の施行後、これまでにトラック、タクシー事業者を合わせ8社に適用。ただ、「改善基準未順守が1カ月31件以上の運転者3人以上、かつ過半数の運転者が告示に規定する拘束時間を未順守」により処分されたのは、ほくうん(森高義男社長、札幌市東区)1社のみ。 生鮮品を首都圏など大都市圏に運ぶ長距離運行が多い地域のトラック事業者の危機感は特に強い。原重則会長ら九州トラック協会の首脳は「拘束時間、連続運転時間など助長しない範囲で、地域ごとに柔軟に設定できる行政処分基準の見直し」を国交省に要望している。 こうした状況に対し、小林氏は「行政処分基準の改正は(厳罰化だけでなく、処分に)メリハリを付けることが目的」とした上で、「改善基準告示は、バス、タクシー、トラック業界の労使代表と厚生労働省との合意の上、1987年に制定したもの。それ以降、変更されていない」と指摘。「労働時間が長引く傾向にあり、かつ夜間帯の死亡事故も多発している中、告示の内容を緩和する環境ではないと(厚労省は考えていると)思う」との見解を示した。 ほくうんの事例に関しては、「継続的に重い労働を課し、通常考えられない長時間拘束。労働基準監督署の指導監督を受けても改善されない、あまり類をみない事例だ」と強調。これを踏まえ、「労基署に問題を指摘された場合、国交省自動車局の貨物課などに相談することも検討してはどうか」と話した。 また、トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議を改組し、近く中央と地方でそれぞれ発足する「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」で「長時間労働の抑制などの問題も取り上げる」と説明。 「トラック事業の経営者は、ドライバーがどんな環境で運転し、いかなる問題があるか――をしっかり把握して欲しい。北海道(ほくうん)のケースは、こうした意識が希薄だった」と述べ、事業者自らも長時間運転など労働条件の改善に取り組むよう求めた。 【写真=「労基署に問題を指摘された場合、貨物課に相談することも検討してはどうか」と小林課長】