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ドローン、物流での活用に期待 法制度面でハードル高く

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2015/04/23 0:00

 小型無人航空機(ドローン)の産業としての健全な発展や安全なルール作りに取り組む、日本UAS産業新興協議会(JUIDA、鈴木真二理事長、東京大学大学院教授)は、テスト飛行場を5月に茨城県に開設し、バッテリー性能と耐荷重量など能力が飛躍的に向上した新開発の機体(マルチコプター)のデモフライトを実施する。貨物積載量や飛行時間といった課題が解消されることで、物流への活用に期待が掛かる。ただ、法制度上の課題が少なくなく、普及促進のハードルは高い。(田中信也)  ドローンの商業利用に関して、米グーグル、米アマゾン・ドット・コムが相次いで無人配送の実証実験を行うことを表明した。独DHLも、離島への医療品定期宅配実験を開始。こうした欧米の動きからみても、物流は特に市場スケールが見込まれる産業とされている。  日本政府も物流分野での活用に着目。国土交通省は7日の物流技術研究会でドローンの活用に向け、学識者や製造会社などからヒアリングした。羽尾一郎物流審議官(55)は「労働力不足解消へ物流の高度化や効率化が課題なので、新たな技術を今後の物流の展開に役立てたい」と期待を込めた。具体的には、山間部など過疎地や、離島への物資配送などの利用を想定している。  ヒアリングで、JUIDAの鈴木理事長(61)は①私有地で気象条件が良い②屋外で電波を遮る障害物が無い③貨物積載量が最大3~5キロ程度――を物流分野での使用条件として列挙。この条件に基づくと「ゴルフ場でのAED(自動体外式除細動器)の輸送」などに限定される。  こうした中、貨物積載量の限界や、バッテリーの軽量化といった課題が大きく改善される可能性が出てきた。5月に行うデモフライトに用いられる機体は、17キロ以内の重量物を搭載でき、飛行時間も荷物を積載せずに70分、積載時も40~50分と、これまでの機体より性能が飛躍的に向上している。JUIDAの熊田知之事務局長(67)は17日の本紙の取材で「物流分野での利用に向けた技術課題の改善が図れるのではないか」との見方を示す。  また、新潟地域の産学官による「NIIGATA SKY PROJECT」が開発中の無人飛行機用小型ジェットエンジンを搭載できれば、飛行距離・スピードはもちろん、「人も運べる」までに向上する見通し。  だが、遠隔操作の確実性の観点から、目視外の飛行に関して安全を担保する手段は無く、長距離の飛行に不安がある。ただ、「遠隔操作に頼らなくて済むよう、学習機能を有する技術開発も進んでいる」としており、将来的には技術面の課題の多くが解消される可能性が高い。  一方、倉庫内での自動搬送・在庫管理への活用も期待されている。室内ではGPS(全地球測位システム)が利用できず、ドローンの活用は不可能だったが、画像処理やセンサーなどGPSに代わる制御方式の開発が進んでおり、「小型の機体ならば活用できるのではないか」とみている。  技術面よりもハードルが高いのが、規制の問題。所有地以外での屋外飛行では、土地の所有者や道路管理者などの許可が必要で、事実上、商用飛行は難しい。  法制度上の問題をクリアするに当たっては、「特区の活用」が見込まれている。政府は「地方創生特区」の第1弾として、秋田県仙北市、仙台市、愛知県の3カ所を3月に指定。仙北市は、国有林の活用が目的として、ドローンの実証を規制改革事項に掲げている。また、特区指定を前に政府が実施した規制改革提案に、徳島県が「物資輸送」、高知県は「中山間地域の配送効率化と医薬品の配送」を目的にドローンを挙げている。  しかし、物流分野での活用について熊田氏は「期待は大きいが、一気に広げるのは困難。まずは災害の被災地への物資輸送など、緊急性の高いものから利用していくべき」と指摘する。  ドローンの普及に当たっては、墜落などの事故や、進入禁止区域での飛行といった違反行為が増えつつある状況を受け、安全を担保するための規制も必要。JUIDAは検討会を立ち上げ、無人航空機の安全ガイドラインの設計に向けた検討を進めており、7月をメドに策定する。ただ、ガイドラインは「ドローンの活用に向けた最低限のマナーを規定する第1段階にすぎない。第2段階として年内までに、仕組みや体制、機体の安全性に関する基準を策定したい」と熊田氏は話す。 【写真=過疎地や離島への物資配送の利用を想定=ブルーイノベーション提供】





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