大田花き、施設拡充で価値創造 鮮度保持「物流が鍵」
荷主
2015/04/13 0:00
大田市場花き部の卸売会社、大田花きは物流施設の拡充で、より良い鮮度の花きをタイムリーに出荷できる体制を2016年12月をメドに整える。4月には、新たな物流施設「OTA花ステーション」を着工した。同社が扱う商品の8割程度は、鮮度が命の切り花。1990年に機械を使った「競り下げ方式」を初めて導入した同社の磯村信夫社長は、世界2位の規模を誇る大田市場花き部のリーディングカンパニーとして、引き続き新たな価値の創造を目指す。(高橋朋宏) ――物流施設の拡充で強化される機能は。 OTA花ステーションは、現施設に隣接する形で、子会社の大田ウィングス(磯村社長、東京都大田区)が整備する。鉄骨造り地上3階建て、延べ床面積は1万2188平方メートルで、稼働すれば、1日当たりの最大取扱量は1千万ケースと現在の1.4倍になる。保冷庫面積の倍増で、鮮度保持機能は強化される。早期の入荷・引き渡しが可能になり、作業効率も向上する。 ――物流部門を増強している。 花きは「刺し身を扱うようなもの」と称されるほど、鮮度が重要視される。鍵を握るのが物流だ。仲卸などを経て消費者に届くまで、プロフェッショナルな温度管理とともに、効率の良い配送体制が求められる。 物流は縁の下の力持ち。物流が無いと物は届かない。一方で今後、ロジスティクス全体のレベルを上げないと、荷主や消費者のニーズに応えることはできないと感じる。大変な試練だが、そこにはビジネスチャンスがある。 例えば、都内で5店舗を展開するフラワーショップには、仲卸業者3者がそれぞれ商品を届けている。店舗数がそれほど多くないから成り立つのだろうが、もっと効率よく運ぶことができるはずだ。我々が介在して物流を担うことで、仲卸業者には販売に徹してもらう。 将来的に我々は、スムーズな物流プラットホームを用意したい。オペレーターとして効率の良い物流網を提供すればリードタイムは短縮する。より長持ちする花を届けられるだけでなく、開店前の小売店のレイアウトなども円滑になる。同業他社から購入された商品についても物流サービスを提供したいと考えている。 現在、国内の花の産地と出荷先は集約されつつあり、大田花きは出荷先として選ばれている。当社を利用しないと、消費者ニーズに応えられない状況の中で、充実した保管・出荷・配送体制の整備を継続していく。 ――中長期的な戦略は。 あくまでも主役は生産者と消費者、準主役は小売店。サプライチェーン(SC)全体を見てオーガナイズしていくという視点を持ち続け、それぞれが、それぞれの業務に専念してもらえるようサポートしていきたい。また、産地は産地、農産物は農産物といったように個別に首都圏に運んでいたものを、混載でも温度コントロールできるような荷姿や、エチレンをカットできるような仕組みづくりも進めたい。 ――情報提供サービスにも取り組んでいる。 花き業界初のシンクタンク、大田花き花の生活研究所(桐生進社長、大田区)では、花きに関する様々な情報を集積し、各種コンサルタント業務も展開している。分析したデータを使って、販売の切り口などを提案している。 どんな商品がどの地域で売れているのかといった情報の蓄積で、「団塊ジュニアの40歳代が消費のけん引役になっている」「リタイアした団塊世代は品質が良くて安価なものしか購入しない」などが分かる。これらの情報を分析し、販売戦略を立てれば、花の消費量は増加する。 花は姿や香りが楽しめ、心身ともに癒やされる。花のある生活は豊かだ。情報提供サービスの名前は「ここほれわんわん」。我々は花咲かじいさんの役割を果たしたい。