白石倉庫&日通商事仙台支店、箱型フレコン開発 震災教訓 荷崩れ防ぐ
物流企業
2015/04/09 0:00
白石倉庫(太宰栄一社長、宮城県白石市)と日通商事仙台支店(鷹野守男支店長、仙台市宮城野区)は、全国農業協同組合連合会宮城県本部(JA全農みやぎ、菊地潔本部長)と連携し、箱型(BOX)のコメ用フレキシブルコンテナバッグの開発に取り組んでいる。東日本大震災でコメ倉庫の荷崩れが多発した教訓から、従来の丸型(茶筒型)の形状を箱型(弁当型)に改めた新タイプのフレコンで、充填(じゅうてん)や荷役、輸送、保管の試験などを行い、製品化の段階に入っている。(黒田秀男) コメの流通では、ひと昔前までは米俵(60キロ)が使われていたが、その後は30キロの紙袋が一般的となり、近年は約1トン入るフレコンが普及しつつある。フレコンは輸送を主眼に置いたとされ、機械による荷積み、荷下ろしで作業効率が高いなど大きなメリットもある。しかし、形状が丸型(円柱)のため、保管する上では課題が多かった。 紙袋に比べて安定性が悪く、高積みには適さない。平面が円形のため保管面積にデッドスペースが生じ、保管効率も落ちる。何よりも安全性の面で問題が大きく、地震の揺れに弱いため、荷崩れを起こしやすい。また、フォークリフト作業では積み付けが不安定で、荷役中の落下事故も発生している。 倉庫業者からは「フレコンの保管は最悪だ。地震による荷崩れが心配で、荷役の作業性も悪い。高積みできないため、紙袋に比べて2倍のスペースが必要となる。低温保管用の空調設備の電気代も倍になる」との不満の声が噴出していた。 そこで開発したのが、箱型のボックスフレコンだ。2013年7月に白石倉庫と日通商事が「震災に強く、安全な作業性を有し、保管効率の高い革新的なBOXフレコンの開発」をコンセプトに取り組みをスタート。地元のJA全農みやぎと連携し、関係企業の協力を得て、新型フレコンの開発を目指した。 この完成版が「BOXフレコン Aタイプ」だ。素材は丸型と同じポリプロピレンを使用し、コメを入れた時のサイズは、幅135センチ、奥行き115センチ、高さ85センチの直方体。高さを低くし、安定性を確保したのが特長だ。コメの収容量は丸型と変わらず、全農みやぎの流通サイズに合わせた1080キロとなる。 箱型のフレコンは上下左右の袋との着地面が広いため、安定性が高く、最大で6段積みも可能。上から強い圧力がかかっても四角形を維持できるよう、内部に隔壁を付け、周囲を4本のベルトで補強している。従来の丸型は2、3段積みが一般的だった。 試作に当たっては、全農みやぎや飼料販売会社、トラック事業者、通運事業者、JR貨物などの協力を得て、1年半かけて仕様・規格の設計開発や充填、荷役、輸送、保管の試験を行ってきた。 テスト輸送では、大型トラックへの2列積載が可能なことを確認し、鉄道コンテナ輸送でも、5トンコンテナに5袋積載の形で、石巻市内の倉庫からJR貨物の石巻港駅を経由して仙台貨物ターミナル駅、そして仙台港地区の倉庫への輸送を成功させた。また、政府備蓄米の保管試験も昨年11月にスタート。政府の梱包資材買い入れ規格とJIS規格もクリアし、県内2カ所で計600トンの低温保管を行っている。 現在、製品化の最終段階に入っている。今後は日通商事(渋沢登社長、東京都港区)が販売主体となり、新タイプのBOXフレコンによるコメの流通を目指す。 既に、2月に日通商事とフレコンメーカーが共同で特許庁に実用新案を届け出している。 白石倉庫の太宰社長は「BOXフレコンは、丸型の課題を改善し、震災に強く、安全な作業性を確保した保管効率の高い梱包資材。普及すれば、食糧の保管や流通が大きく変わる可能性がある。農産品物流の変革に向け、普及促進に努めたい」と話している。 【写真=丸型から箱型に切り替えることで安定性を確保】