<トップに聞く>伊藤忠ロジスティクス社長 佐々和秀氏 4カ国軸に海外展開 長期契約で総コスト削減
物流企業
2015/04/06 0:00
伊藤忠ロジスティクス(東京都港区)は、伊藤忠商事グループの総合物流企業として、情報力、海外ネットワーク、陸・海・空の物流機能を最大限に活用し、多様なサービスを展開している。近年、特に海外展開を加速するとともに、物流に商流機能も加えたソリューションに力を注ぐ。佐々和秀社長(65)は、中国、タイ、インド、インドネシアのアジア主要4カ国をベースに、それぞれの国内と周辺国をまたに掛け、事業を拡大していく方針だ。 ――様々な事業を手掛けているが、特に力を入れている分野は。 「自動車」「食品・食材」「生活消費財」「医薬品」を重点4分野に位置付けている。併せて、ビジネス形態としては、「コールドチェーン事業」、Eコマース(電子商取引)などの「通販事業」、世界規模の「サードパーティー・ロジスティクス(3PL)事業」に注力している。 ――商社系物流の強みは何か。 顧客の物流業務全てを引き受ける包括的契約が増えた。現在17社と契約し、複数社から引き合いがある。在庫管理や輸送、拠点の配置などを当社が一元管理することで、トータルで物流コストを削減できる。拠点単位や短期間の契約ではなく、長期間で全社的にタッグを組む方が確実に効果は上がる。 ――社長就任後、業績は順調に伸びている。 2010年に就任してから、社員の頑張りもあり、5期連続で増収増益を計上した。10年度の連結純利益は5億円台、11年度11億円台、12年度1億円台、13年度15億円台、14年度は18億円台を見込んでおり、15年度は、10年度に立てた目標の20億円を達成できる見通し。海外事業の利益率の向上が大きく寄与している。 ――海外事業をどのように拡大するのか。 世界市場をターゲットとした3PL事業に注力しており、中国、タイ、インド、インドネシアの4カ国で、それぞれ現地の地場物流を展開している。ベトナムやミャンマーといった周辺諸国の需要にも、この4カ国のいずれかの拠点からも対応が可能だ。これらの国には、伊藤忠商事が出資したドールの事業、中国政府系のシティック・グループ(中国中信)、タイのCPグループなど大手コングロマリット(複合企業)などもあり、多くのビジネスチャンスに恵まれている。 中国は、生産国から消費国へのシフトが目覚ましく、特に通販市場の伸びしろは大きい。また、コールドチェーンのネットワーク化を進めており、青島では冷蔵冷凍倉庫から、小型や大型の冷凍冷蔵トラックを走らせている。中国国営の水産大手である大連海洋漁業集団との合弁事業では、実運送を行う子会社を設立し、まずは大連市内で小型貨物車での冷凍冷蔵輸送サービスをスタートする。いずれは、中国東北地区を対象に10トントラックによる遠距離輸送を手掛ける予定だ。 ――日本国内の事業展開を教えて欲しい。 物流拠点を統合し、効率化と顧客の物流経費削減を進めている。14年に埼玉県加須市に医薬品物流センターを開設した。また、4月に千葉県松戸市松飛台の新センターを稼働するが、これまで3カ所で借りていた倉庫を集約する。 ――喫緊の課題は何か。 海外展開を加速したいが、そのための人材が不足している。大学新卒者は毎年15〜17人採用しているが、16年度は、25人は確保したい。キャリア採用も適時行っている。文・写真 田中信也 ささ・かずひで 1974年神戸大学経営学部卒業、伊藤忠商事に入社。執行役員、常務執行役員繊維カンパニーエグゼクティブバイスプレジデントなどを経て、10年6月から現職。 ◆企業メモ◆ 1961年7月に大阪市浪速区で伊藤忠運輸倉庫として創業。10年に現社名に変更した。海外市場をメーンにコールドチェーン、通販物流、3PLの各事業を推進。資本金42億6千万円、グループ従業員数は1150人。14年3月期の連結売上高は549億3800万円。