日本郵政/中計見直し、郵便・物流で反転攻勢 他社宅配便からシェア獲得
物流企業
2015/04/06 0:00
日本郵政(西室泰三社長、東京都千代田区)は1日発表したグループ中期経営計画で、郵便・物流事業の「反転攻勢」に向け、ゆうパックの2017年度までの黒字化、ゆうメールとゆうパケットの取り扱い拡大、買収する豪物流大手トール社を核とした国際物流事業の展開などを打ち出した。国内物流事業では、小型・薄型荷物を対象としたゆうパケットによる他社の宅配便からの「シェア獲得」を目指す。(田中信也) 日本郵政グループは、14年2月に16年度までの中計を策定したが、今秋の同社と金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)の株式上場スキーム(手法)や経営環境の変化などを受け、見直した。同日の発表会見で、西室社長は「(前の中計で示した)考え方は基本的に変わっていないが、超低金利環境の継続や少子高齢化、過疎化の進展などグループを取り巻く環境を踏まえた」と説明した。 新たな課題として①更なる収益性の追求②生産性の向上③上場企業としての企業統治と利益還元――を抽出。三つの課題を克服し、成長・発展を遂げるための事業戦略とグループ戦略をそれぞれ五つ立てた。 事業戦略の一つとして「郵便・物流事業の反転攻勢」を掲げる。国内物流事業では、成長が著しい通信販売・eコマース(電子商取引)市場を中心に積極的な営業活動を展開するとともに、オペレーション基盤の整備・利便性向上により、ゆうパック、ゆうメールなどを拡大する。 ゆうパックの取り扱いは前の計画で「16年度に5億個」を目標に掲げていたが、14年度実績で4億9千万個が見込まれるため「17年度6億8千万個」に上方修正。ゆうメールとゆうパケットは、14年度見込み33億8千万個から「17年度41億個」への拡大を目標に置いた。具体的な取り組みとして、①営業スキル向上や集荷力強化などによる中小口営業の拡大②コンビニエンスストア受け取り、郵便局留め、受け取りロッカーの展開による利便性向上③物流ソリューション営業の推進④ゆうパケットによる他社宅配便からのシェア獲得――などを挙げている。 国際物流事業の展開では、トール社の豊富なM&A(合併・買収)実績やグローバルでの経営手腕を生かし、アジアや欧米で更なる企業買収を行う方針。日本郵便(高橋亨社長、千代田区)とトール社の売上高を合わせると、郵便・物流事業で世界5位に躍り出る。一層の拡大戦略を推し進めることで、物流業界のリーディングプレーヤーを目指す。 このほか、EMS(国際スピード郵便)、国際宅配サービスの改善、貿易代行、商談会といった海外販路の拡大支援にも力を注ぐ。 一方、グループ戦略では、効率化・コストコントロールに向け、郵便・物流ネットワーク再編に取り組む。 1300億円を投じ、集配郵便局内で実施してきた郵便物やゆうパックなどの区分作業拠点を集約するほか、機械処理率を高めることで生産性を大幅に向上させる。併せて、業務量の増減によって配送・配達スタッフを増員するなど、業務量に応じた柔軟な要員配置を行っていく。