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物流とメディア/ラジオ、「声と言葉」で物流支える

その他

2024/02/20 17:26

 運転時間の長いドライバーにとってラジオは、運転中の重要な情報源として今日まで重宝されている。新しい音楽との出合いやイベント情報のほか、事故や渋滞などの道路状況、天気予報など仕事に必要なニュースを聞けるため、ドライバーにとって最も身近なメディアの一つと言える。実際に情報を発信する側は、どうなっているのか。ドライバーの耳に情報が届くまでの裏側を追った。(ダシルバ・サミー)


道路交通情報センター

 刻々と変化する道路情報を約60秒という短い時間の中で、正確にドライバーに伝えるためには様々な工夫と横断的な情報収集が重要となる。多い日は、1日9本のラジオ番組で道路情報を提供するという日本道路交通情報センター(JARTIC、池田克彦理事長)九段センターの丹羽歩アナウンサーに話を聞いた。
 正確な情報を短い時間の中で伝えるためには、他メディアのように「短く簡潔にする」だけでは不十分で「耳で聞いて伝わりやすい言葉に変える必要がある」と話す。例えば、法面(のりめん)火災や崩壊などは固い言葉に聞こえるため、「道路脇の芝生が燃えている」「斜面が崩れていた」などと言葉をかみ砕くことが重要になってくる。
 また、「放送の手引き」というJARTICオリジナルのマニュアルがあり、放送で使う表現を精査しながら原稿を作成していく。一例として「放送では『自然渋滞』という言葉は使わない。原因は必ずあるため、『交通集中による渋滞』などと表現する」と説明する。
 原稿は放送予定時間の30分前から作成に取り掛かる。日中の時間であれば、センターに各都道府県警察や高速道路会社にいる駐在員から情報が集まり、アナウンサーが確認し、原稿を作成していく。しかし、放送は24時間あるため、夜間など駐在員がいない時間帯などはアナウンサーが自ら各地方の交通管制センター、高速道路会社、国土交通省などに電話して取材し、情報収集する。

60秒で正確に、伝わりやすく

 土日や祝日の場合、普段車に乗らない人が行楽地に向かうことが多くなると予想されるため、都心から地方へ向かう高速道路下り線の情報を多く集めている。「土日は平日に比べ都内の一般道路の渋滞は少ない。なるべく関越自動車道や東名高速道路など、遠くへ行く道路の情報を集める」
 しかし、放送の時間が限られているため、全ての情報を伝えることができるわけではない。60秒の放送を予定していたとしても、番組が長引き放送が40秒と短くなることもある。状況を確認しながら、優先順位を付け、時間に収まるように取捨選択をしていく必要がある。
 丹羽さんはアナウンサーとしてのやりがいについて、「普段の交通情報以外にも、大雪や台風といった災害時や大型連休の際など困っている道路利用者の力になれる」と強調する。夜勤の時には、電話による情報も提供しており、「トラックドライバーからの電話にお答えすることが多い。長距離運転される方も多く、同じ時間に働く同志と思っている」と話す。
 「私たちは24時間365日放送や電話で対応している。いつでも困ったことがあれば問い合わせていただきたい」
 今日も、ラジオから耳なじみのある「交通情報センターの丹羽さんお願いします」というフレーズが聞こえてくる。


横浜エフエム放送

 横浜エフエム放送(兒玉智彦社長、横浜市西区)で毎週日曜日放送中の「ALFALINK presents RADIOLINK」は日本GLP(帖佐義之社長、東京都中央区)が提供する30分番組で、暮らしを支える物流をテーマに、役に立つ情報を届けている。
 一つの番組が出来上がるまでには、DJとラジオ局だけではなく、制作会社や広告代理店など複数関係者が一つのチームとしてまとまり、番組を形づくっている。
 同番組は生放送ではないため、事前に録音・編集する必要がある。月に二度収録を行い、一度の収録で2週分収録する流れとなる。今回、企画会議に同席し、収録現場を見学させてもらった。そこではラジオ局、制作会社、広告代理店などの制作チームメンバーが集まり、番組で扱う企画テーマについて議論を重ねていた。
 「物流番組」とは言ってもDJをはじめ、制作チームは全員が物流を専門にしてきた人たちではない。それぞれがネットや新聞など様々な媒体から情報収集を行い、物流にまつわるテーマを机の上に出し、アイデアを出し合っていた。
 それぞれが気になった物流に関わるニュースを共有し、深掘りしたい内容を考える。更に、ゲストは誰を呼ぶのか、出演依頼を断られたり、企画が突然変更したりした場合の予備の企画をどうするか、リスナーへの特典は何を用意するかなど、1カ月以上先のスケジュールや時期を考えながら内容を決めていく。
 ディレクターを務める青木隆行さんは「この仕事を始めて30年経つが、物流をテーマにした番組の制作は今回が初めて。物流は網羅する範囲が広く日々勉強だ」と話した。企画が固まると内容を構成作家に渡し、収録で使用する台本を準備する。
 収録当日、スタジオ入りの1時間前に制作チームが到着。スタジオの使用時間は2時間と決められており、時間内で2週分の収録を行う必要があるため、入念な準備・打ち合わせを行う。青木さんは「収録が大幅に遅れることはこれまでなかったが、リミットの1分前に収録が終わり、荷物を担いで走り去るようにスタジオを後にしたことは何度かある」と笑顔で話した。

トラック気になり責任感じる

 スタジオに入るとまず、DJの声質に合わせて収録環境の調整を行う。その間、ラジオDJの小林千鶴さんはリスナーから届いたメールをチェックする。メールはリスナーの個人情報が書かれていることもあり、ラジオ局の外に持ち出すことができないため、当日のチェックになるという。
 収録環境の調整、小林さんのメールの確認が終わると、台本の確認に移る。物流分野をテーマにしているため専門用語が出ることもあり、咀嚼(そしゃく)し丁寧に説明すべき点などを確認する。横浜エフエム放送の東京営業部に所属する伊澤至さんは「土日は観光などで都市間の移動が活発になるので、新規で視聴するリスナーが多くなる傾向がある。そのため、業界用語などは毎回出てくるものでも常に分かりやすく説明することを心掛けている」と話した。
 収録が始まると台本をベースに進むが、制作チームの判断で、トーク中に適宜修正をしていく。詳しく説明した方が伝わる話や、台本にはないがゲストの話を更に掘り下げてほしい時などに制作チームから小林さんに指示が飛ぶ。音楽やジングルなど数種類の音楽がセットされたフェーダーという機械を駆使し、番組を彩る効果音を入れ、2時間の収録時間はあっという間に過ぎていった。
 印象に残ったのは小林さんが常に制作スタッフに体を向け、対話するようにトークしていたことだ。本人に聞くと「DJを10年くらいやる中で生まれたスタイル。掛け合いをすることで温度が生まれ、リスナーとのリアルな会話が生まれると考えている。ただ、スタッフの反応はあくまでスパイス。リスナーがいることを忘れてはいけない」と語った。
 番組開始から1年が経ち、小林さんに物流に対する認識の変化などはあったかどうか問うと「毎日、物流のことを考えている。新聞を読んでも、町を歩いていてもトラックが気になるようになった。物流番組のDJとして普段から物流への向き合い方に対する責任も感じる」と返ってきた。
 収録された音源は3時間ほどの編集作業を経て、私たちの耳に届く。





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