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物流とメディア/座談会「トラック協会の広報戦略」

その他

2024/02/01 16:57

出席者(順不同)
岩手県トラック協会 総務部長       
 村上 正寛氏
神奈川県トラック協会 総務部総務広報課長   
 小泉 恵子氏
愛知県トラック協会 企画広報部長   
 寄田 智夫氏
福岡県トラック協会 総務部総務課係長 
 椛島 幹大氏
〈司会〉小紙東京支局次長       
 吉田 英行

「24年問題」を更に訴求
業界内の意見収集課題

 運送業界が他産業、消費者に向けて訴えたい課題は山積している。業界団体としてスケールメリットを生かした広報活動を展開できるトラック協会は、どのような取り組みを行っているのか。また、SNS(交流サイト)が一般化する中、新しいメディアをどう活用していくのか。各都道府県ト協の広報担当者に議論してもらった。

小泉 ネットCM「効果高い」
椛島 舞台で仕事や課題表現

 吉田 トラック協会の会員の大多数は中小零細企業で、一社単独でPRするのは難しいのが現状です。多様なメディアを活用した広報活動は、トラック協会の重要な役割になっています。まず、参加者各位のメディア展開の実例をお聞きします。
 村上 全日本トラック協会(坂本克己会長)がウェブコンテンツ用に制作したアニメ「もしもトラックが止まったら」を1分の尺のままテレビCMにして放送しています。10年以上継続しているため、県内の子どもたちにはかなり浸透しており、子どもから大人にも伝わると考えています。また、トラックドライバーを就職の選択肢として考えてもらえるようなCMも放送をしていました。
 あとは、「2024年問題」のCMで、動画投稿サイト「ユーチューブ」に討論番組「朝まで生テレビ!」を模した7分以上の長い動画を掲載してます。ダイジェスト版のCMも2種類放送しています。ユーチューブの広告も打ち、動画やウェブサイトに誘導する取り組みもしています。
 ラジオでは、事故防止啓発のスポットCMを流しています。年末年始の飲酒運転の防止で、警察の方にコメントしていただいているものもあります。新聞でも、23年度内には24年問題を訴求する広告をウェブと連動した形で出す予定です。また、各種事業を報道してもらっており、メディア懇親会を開いて業界の現状と課題を説明する取り組みもしています。
 小泉 新型コロナウイルス禍以降、メディア関係の広報を増やしています。エッセンシャルワーカーとしてのトラックドライバーの活躍をPRする「あたりまえを、止めるな」プロジェクトでは、バス停への広告掲示とともに特設サイトも作成しました。会員企業のエピソードをドラマ風の文章でつづった、「当たり前を止めない」ためのドラマ「あたドラ」を掲載しています。
 また、雑誌「東京グラフィティ」とコラボし、多種多様なトラックの押しポイントをドライバーさんが紹介する「はたらくトラック大図鑑」を掲載しています。
 ユーチューブでは、標準的な運賃の普及促進、活用に向けたCMを流しています。送料無料という表示にも触れ、送料は無料ではなく運賃をもらって届けていると伝えています。再生回数は100万回を超えているものもあります。
 また、テレビ番組のネット配信サービス「TVer(ティーバー)」にCMを出させていただきました。安価かつドラマなど視聴率の良い番組の間にも放映してもらえるので、効果が高いと見込んでいます。また、教習所で流れるテレビ番組にもCMを出しています。
 テレビCMも魅力的ですが、ユーチューブやティーバーのように地域・年齢層をセグメントし、効果的に安価にできる広告もこれからどんどん試していきたいと思います。ウェブメディアとしては以上のようなものに注力しました。
 マスメディアではラジオCMをFM横浜、オールナイトニッポンでも流しています。また、新聞に標準的な運賃を啓発する広告を打ちました。24年問題で、24年からは当たり前に荷物が届かなくなるかもしれない、という内容です。
 物流に関して考えるきっかけの一つを提供できたと思っています。新聞の出稿調査もしており、その中で一般の方の意見を収集しています。「物流はなくてはならないものだ」と認識している人は多かったので、次のステップとして、そう思ってくれる方々を味方にできる広報活動に今後も取り組みます。
 寄田 ユーチューブでは女性の新人ドライバーを主役にした動画を作成しました。ベテランドライバーとの会話の中で、トラックドライバーの働く意義を見いだすものです。再生回数は50万回を超えています。
 X(旧ツイッター)やフェイスブックでも、イベント関係など速報性の高いものを中心に発信しています。ただ、不慣れなこともあり、どうしても無難な発信になる傾向を感じています。
 また、ラジオCMは比較的高い年齢層や運転中のドライバーに向けた広報手段と捉え、交通安全などの注意喚起を目的としたメッセージを放送しています。22年度は全ト協が作成したテレビCM素材を基に、「トラックは生活と経済のライフライン」という同一のテーマを踏襲し、ラジオCMに作成し直しました。FM放送で午前6時台から午後6時台に、2週間で合計250回、おおむね30分から1時間に1回流れるよう放送しました。
 テレビは、独自に開催している就職面談会のPRを、ゴールデンタイムも含めて地元のテレビ局で流しました。新聞では一般の方、特に荷主企業の方が読まれる媒体に、特筆すべき行事がある場合は取材をお願いしています。
 椛島 近年はユーチューブ、Xを中心に、SNSによる広報に注力しています。予算の都合もあり、費用対効果を重視してシフトしてきています。
 テレビとラジオは、主にトラックの日のPRで利用しています。23年のトラックの日イベントでは「ギンギラ太陽 ’s 」という地元の劇団に舞台をやってもらいました。トラックの仕事や課題を舞台で表現していただいたもので、広報動画などに活用したいと思っています。

村上 言いづらいこと言える
寄田 公共性踏まえ炎上注意

 吉田 従来のテレビやラジオ、新聞の他に、SNSも広報媒体として有力になっているようですね。トラック協会の広報活動には営利を目的にしないなど様々な制限がありますが、メディアを活用する上でどんなメリットとデメリットを感じていますか。
 寄田 企業がCMを展開する場合、媒体によっては高い費用を負担する必要がありますから、業界全体をPRするのは、団体である我々トラック協会が適任だと思います。また、1事業者としては言いづらいことを一般の方、荷主の企業に向けて代弁できるのが大きなメリットと感じます。
 一方で、様々な業種の荷主の仕事を請け負っている事業者があり、それをどうまとめていくかが課題だと考えています。トラック協会が発信することで「全てのトラック事業者が思っていること」と捉えられる可能性もあります。伝えられることには限りがあるため最終的に意見をまとめる必要がありますが、慎重に行わなければなりません。
 村上 私も、個々の企業が言いづらいことを言えるのは大きなメリットだと感じます。ただ、業界の味方である業界団体が発信しても、内容によってはエゴに聞こえる懸念があります。24年問題を啓発する動画を作成した時は、擬人化した荷物やトラックに課題を言ってもらうという工夫をしました。また、同じく意見の取りまとめを課題に感じています。運送事業者といっても荷物や運び方、会社の規模も様々で、統一的な状況にはありません。広報・啓発の内容は厳重にチェックする必要があります。
 寄田 業界内の意見収集でも課題がある中、一般の方などから反応があった時への対応も難しいと感じています。出来る限り多くの意見を聞きたいですが、文面などからは個別・特定の案件には深く関われない、顔が見えないので真意が分からないなど悩ましいケースもあります。
 椛島 SNSで多数のコメントをもらえるようになりましたが、全部を吸い上げられないのは残念です。業界が抱えている深刻な問題も意見として寄せられるため、これを何らかの形で生かしていきたいです。
 小泉 広く知ってもらうことにより、様々なご意見を頂くこともあります。それらを真摯(しんし)に受け止め、皆さまに物流業界に対して味方になりたいと思っていただけるような広報活動を行いたいと思います。
 寄田 公共性の高い団体のため、炎上には注意しなければなりません。ただ、バズる(SNS上で大きく注目される)ことを期待した、踏み込んだ内容が書けない、というのは同感です。現状、ウェブサイトと同じことや似ていることを書いていて、SNSの特長を生かしきれていないと感じることがあります。
 また、メディアごとに掲載スペース、放送時間など制限があります。我々が伝えたいことが正しく伝わっているかという検証が難しいと思っています。広く伝えるのも重要ですが、限界があるのでメディアの種類ごとに、得意なターゲット層にだけ普及させる潔さも必要だと思っています。

椛島 SNSの費用対効果大
小泉 媒体ごとに内容変える
寄田 新しいものを随時研究

 吉田 会員の思いや業界を背負っている分、広報にも責任が生じる難しさがあるようですね。では次に、今後より高い啓発効果を得るためにどうやってメディアを活用すればよいか、どんなメディアを利用するべきか、教えてください。
 椛島 従来は広告といえばテレビ、新聞、ラジオでしたが、近年はスマートフォンが普及し、インターネットの影響力が大きくなっています。若い人はユーチューブやインスタグラムを毎日チェックしています。テレビでもインターネットがつながるものがあり、ユーチューブを視聴できます。
 更に、エリアを絞った広告を展開できるため、訴求効果が高いと感じています。何より、費用対効果が大きいので、今後はSNSが重要な広報手段になると感じています。「いいね」や拡散の数などで反響の大きさを数字で把握できるのも大きなメリットです。
 小泉 SNSは不特定多数にPRできるのがいいですね。おっしゃる通り、視聴者の年齢や地域を絞って発信できるのもありがたいです。神奈川県内の人に向けてや、人材確保のCMは若年齢層に流すなど柔軟なターゲティングが可能です。
 ただ、従来のマスメディア広告も、媒体を変えることでターゲットを分けることができます。媒体によって流す内容を変えるのも大事です。例えば教習所の方で流してるCMでは、運転に興味がある人が見るのでトラックドライバーはエッセンシャルワーカーであるという面を推す。新聞では荷主となる方も読んでいるので業界の課題を説明するといった形です。
 村上 業界の抱えている問題が多いので、どうしてもSNS向けの端的でインパクトのある情報発信は難しいケースもあります。岩手では割り切って長い動画をつくり、その動画に誘導できるよう入り口を散りばめる方法をとっています。
 都市部ではテレビは金額的に高いというお話がありましたが、その面では地方のメリットもあると感じました。引き続きテレビCMも継続しながら、新しい媒体を取り入れたいと思っています。
 荷主向けには硬い内容になるので新聞を使いつつ、詳細はウェブサイトに誘導するという形で24年問題を取り上げたいと検討しています。
 小泉 確かに広報では全てを伝えきれないので、ターゲットやテーマを絞るのが大切だと思います。1年間の大きなテーマを決め、広報活動を行っています。テーマごとにターゲットを決め、広告ツールを決める形が良いと考えています。
 CMを作成する時は、色々と伝えたいことがあるのですが、詰めすぎずにシンプルに、大衆が理解しやすい内容を心掛けています。
 タイムリーさも重要です。標準的な運賃や24年問題も時期がずれたら鮮度が落ちるので、意見広告の掲載も協会内で一致団結して早急に動きました。タイムリーな発信ができるようにアンテナを張ろうと常々思っています。
 生の意見を収集できるので、新聞の出稿調査も効果的です。出稿調査をしている広告代理店によると、他の広告に比べ、「物流関係、トラック協会の発信は自分事として考えてくれている人が多い」と言われたことがあります。新型コロナ禍で、トラックドライバーのエッセンシャルワーカーとしての認知度が上がったこともあると思います。
 寄田 ターゲットをどこに絞るかは今後も研究し続けようと考えています。あとは新しいメディアにも目を向けていきたいです。新しいものが登場すれば、随時研究していく必要があると思います。ネット関連は宣伝効果を見定める上でも、即時性でも、将来的には広報の中心になると思っています。

椛島 報道通じ外部発信強化
村上 人増やすPR活動重視
寄田 ターゲット明確化必要

 吉田 ターゲティングやタイムリーさ、媒体の使い分けといった重要なポイントがあり、各ト協の工夫が垣間見えました。最後に、今後実施したい広報活動や、PRしたいテーマを教えてください。
 椛島 24年問題が大きな課題で、更に訴求していく必要があります。消費者と事業者に分けて協力依頼をしていくべきだと考えています。その中で、まだ福岡が少し弱い部分ですが、報道機関へ発信し、外部に広げる活動を強化していきたいです。
 村上 24年問題は業界全体の喫緊の課題ですね。人手不足が顕著になるので、業界に人を増やすためのPR活動を重視していきます。
 他産業から運送業に入ってもらうには、選んでもらうための魅力が業界自体にも備わっていることが必要です。そのために、人材確保に注力する機運が高まるような内部向けの啓発も行っていきたいです。この課題は業界で一致団結して取り組む必要があると思います。
 また、この座談会で先進的な事例を聞くことができ、新しいメディアの活用を進めるべきだと改めて感じました。ユーチューブや他のSNSを更に活用する方法を検討していきます。
 小泉 不特定多数に届くメディアも大事ですが、それだけでは寂しいとも感じています。引き続きメディアで広く発信しながら、深く印象づけられる対面でのPR、体験型のイベントもメディアとバランスを取りながら行っていきたいと思っています。
 寄田 愛知でも同じように、各種CMや媒体等を用いた視聴型と、イベント開催などによる直接参加型とのバランスをとっていきたいと思います。また、皆さんのお話を伺ってターゲットを明確にする重要性を再認識しました。限られた予算を有効に使うためにも、適切な広報をするターゲット層の選定に取り組んでいきます。
 広告代理店から企画を持ち込まれることもありますが、それをどう使えば、どのような成果が見込めるかというところまで聞いて、より効果の高い広報を行っていきます。
 吉田 本日は貴重なご意見を聞かせていただき、ありがとうございました。
 (根来冬太、吉田英行、鈴木明香理、梅本誠治、武原顕が担当しました)


 ▼むらかみ・まさひろ 1974年生まれ、岩手県出身。2002年岩手県トラック協会入職。22年から現職。
 ▼こいずみ・けいこ 1979年生まれ、千葉県出身。99年神奈川県トラック協会入職。2020年から現職。
 ▼よりた・ともお 1968年生まれ、愛知県出身。93年愛知県トラック協会入職。2022年から現職。
 ▼かばしま・まさひろ 1978年生まれ、福岡県出身。2003年福岡県トラック協会入職。10年から現職。





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