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物流とメディア/ミュージック、物流ニッポン「ベスト10」

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2024/01/22 18:01

 歌は世につれ、世は歌につれ──。インターネットが主流となり、「世代を超えて誰もが知る曲」は少なくなったが、今も世相を表す慣用句として使われる。傷心、希望、絶望、恋、夢、後悔、友情、愛。音楽には人間の営みの中の普遍性が表れ、トラックドライバーにスポットライトを当てたものも多い。トラックをテーマにした曲ベスト10を選んだ。(原田洋一)

旅情を醸す七五調

 ツアー中(?)に立ち寄ったサービスエリアでの様子を描いた曲。駐車場に並ぶトラックのナンバーに書かれた地名を、七五調に並べた印象的なサビが旅情を醸し出す。
 中島みゆきの作品は、夜をテーマにしたものが多く、自動車を星に見立てることがよくある。ドキュメンタリー番組のエンディングに採用された「ヘッドライト・テールライト」もその一つだ。
 本人もお気に入りなのか、コンサートのセットリスト(曲目)に取り上げたツアーは複数回に及ぶ。1995年には香港でも披露された。聞かせどころに出てくる土地で生歌を耳にすれば、地元ファンのうれしさもひとしおだ。

『流星』中島みゆき

夢諦めた仲間へ

 ミュージシャンになる夢を諦め、家族を養うために長距離トラックのドライバーになった仲間の心情を思い、ブルースコードに乗せて切々と歌い上げる。
 この曲を収録したアルバムのタイトルは、作者自身の名前「永吉」。よほど気持ちを込めて作ったに違いない。
 バックを固めるメンバーも豪華だ。プロデューサーに迎えたアンドリュー・ゴールドをはじめ、ベースのケニー・エドワーズ、ドラムのマイク・ボッツなど、リンダ・ロンシュタットやカーラ・ボノフを支えたウェストコーストサウンド系の人脈が名を連ねる。

『奴に…』矢沢永吉

「達成感」浸る姿を熱く歌う

 トラックには演歌がよく似合う。長距離ドライバーを対象にした深夜のラジオ番組でも多くの演歌歌手がパーソナリティーを務め、電波をにぎわせてきた。
 無事故を祈る家族の面影を胸に、前の車をあおりたくなる気持ちを抑えるドライバー。東海道から山陽道を走り抜け、少し汚れた車体を見つめながら達成感に浸る姿を熱く歌う。
 1995年に発表されたこの曲の作者は「琴五郎」とクレジットされている。実はこの名前、山本譲二のペンネーム。師匠の北島三郎と同様、シンガーソングライターとしての顔ものぞかせる。

『夢街道』山本譲二

疾走感あふれるロック

 ブルース・スプリングスティーンをスターダムへと押し上げた、疾走感あふれるロックナンバー。だが、厳密に言えば、物流について歌った曲ではない。
 若き肉体労働者が夜中に車で街を飛び出し、ハイウェーへ乗り込む歌詞が出発を思わせるらしい。米国のトラックドライバーが選ぶ人気チャートによく顔を出す。
 中島みゆきの『流星』には、主人公に話し掛ける「おっちゃん」が登場する。口笛を吹きながら去るのだが、それは「スプリングスティーンの曲」とする描写がある。もしかすると、この歌だったのかもしれない。

『明日なき暴走』ブルース・スプリングスティーン

子ども向け定番ソング

 フジテレビ系の幼児向け番組「ひらけ! ポンキッキ」で発表され、1986年にシングルがリリースされた。
 拍子の一つを空け、歌詞の一部を追いかけるように繰り返す曲を「エコーソング」という。メロディーに乗せて楽しく覚えられるため、このスタイルをとる童謡は多い。
 カーキャリア、パネルバン、タンクローリー、フォークリフト、ダンプカー、クレーン車──。この曲で種類を覚えた人もいるだろう。元号が令和に改まった今も、就学前の子ども向けの定番ソングとして根付いている。
 2020年には、神戸市消防局が協力する形で「4」が作られた。ボーカルは声優の神谷明だ。

『はたらくくるま1~3』のこいのこ、子門真人、窓花さなえ

車両視点で描く運転者

 米国で、トラックソングが一大カテゴリーとして成立しているジャンルが、カントリーミュージックだ。元々、馬車の歌が多く、自動車が登場する以前の輸送手段だったこともあり、物流と縁が深い。
 中でも、レッド・シンプソンは「トラック専門」と枕詞が付く歌手。わがままなドライバーの姿を車両の視点から歌うこの曲は、キャリア最大のヒット作となった。
 なお、同国で「18本のホイール(18 wheels)」と言うと、トラックを指す。複数形の「s」を省き、「~する人」を表す接尾辞「er」を付ければ、トラックドライバーになる。

『アイム・ア・トラック』レッド・シンプソン

ホーボーの自由な精神

 19世紀末から20世紀初、「ホーボー」と呼ばれる肉体労働者が米国にいた。貨物列車の隙間に隠れて無賃乗車を繰り返し、各地を駆け回ったホームレスでもある。
 1960年代に生まれたヒッピー文化を代表するバンド、グレイトフル・デッドもホーボーの自由な精神に影響を受けた。代表曲でもある、この曲の歌詞にも表現されている。
 シカゴ、ニューヨーク、デトロイト、ダラス、ヒューストン──。全米各地でライブを行うため、トラックに乗って旅に回る様子が長距離ドライバーの共感を呼ぶようだ。
 2023年4月、ボブ・ディランが来日公演でこの曲をカバーした。ニュースはネットを通じて即座に流れ、世界中のファンを驚かせた。

『トラッキン』グレイトフル・デッド

「トラック野郎」主題歌

 1975年に始まった映画「トラック野郎」シリーズの主題歌だ。「仁義なき戦い」で評価を上げた菅原文太がトラックドライバーに扮してコメディーを演じた。一緒に歌うのは、相棒役を務めた愛川欽也だ。
 作詞・作曲は阿木曜子と宇崎竜童。後に、数々のヒット曲を手掛けるコンビとなっていく。
 宇崎得意のブルースコードを基調としながら、童謡「一番星みつけた」のメロディーを取り込み、哀愁漂う曲に仕上げた。
 なお、劇中で使われたトラック「一番星号」は、オリジナルの車両が現存している。

『一番星ブルース』菅原文太、愛川欽也

宇宙を飛び回る運び屋

 1972年発売のアルバム「マシンヘッド」に収録されたハードロックナンバー。宇宙を舞台に仕事する長距離ドライバーの曲だ。惑星を飛び回る運び屋の休日をイアン・ギランがシャウトする。
 アルバムのトラックの長さは4分半ほどに過ぎない。しかし、ライブで演奏すると、20分を超える大作になる。同年に行われた来日公演でも披露され、ライブアルバムの傑作と評される「ライブ・イン・ジャパン」で聴くことができる。
 長いソロに差し掛かると、ジョン・ロードがホルストの「ジュピター」のフレーズをプレー。まるで宇宙にいるような感覚を醸し出す。

 『スペース・トラッキン』ディープ・パープル

出発告げるメロディー

 2001年まで放送された深夜ラジオ「いすゞ歌うヘッドライト」のクロージング曲。パーソナリティーの「行ってらっしゃい」の掛け声と共に流れるメロディーを覚えている人も多いだろう。
 夜から朝へ、空の色が移り変わる午前5時。全国に散らばる長距離ドライバーへ出発を呼び掛ける。夜明けを待つ仲間にエールを送り続けた。
 この番組、トラック関係者のほかに意外な「仲間」がいた。受験生だ。夜遅くまで勉強する学生が、全く縁のないドライバーの投稿に耳を傾け、頑張る様子に勇気づけられたという。

『夜明けの仲間たち』糸川蛍子、麻生詩織





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