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歌手 坂本冬美さん/トラック業界へエール、ドライバー居ないと困る 触れ合いに幸せ感じる 深夜放送「睡魔との戦い」 「頑張ろう」と思える歌を お客さんあっての仕事

その他

2024/01/15 15:42

 長距離トラックドライバーのオアシスと呼ばれた、演歌や歌謡曲を中心に放送する深夜ラジオ番組が、かつて存在した。TBSの「歌うヘッドライト」(いすゞ自動車提供)と人気を二分した文化放送の「走れ! 歌謡曲」(日野自動車提供)では、いまや演歌界の大看板に成長した歌手の坂本冬美さんが1989、90年にパーソナリティーを務めた。放送当時に取材した本紙記者の北原秀紀が34年ぶりにインタビュアーとして再会。ドライバーやトラック運送業界へのエールを送ってもらった。

触れ合いに幸せ感じる

 ――新型コロナウイルス禍での芸能活動には、かなりの制約があったのではないでしょうか。
 緊急事態宣言時はコンサートが全て中止・延期になりました。ステージに立てないことが一番つらかったですね。歌やステージなどのパフォーマンスは、余裕があってこそ楽しんでいただけるものなので、仕方のないことですが、寂しさを感じました。
 そんな中で、元気に過ごしていることをファンの皆さんに伝えたり、今の歌を届けたりしたいと考え、コロナ下に始めたユーチューブチャンネルで自宅から生配信しました。リクエストを募り、普段着のままで歌をお伝えする形で、ファンとの交流を続けられました。
 ――行動制限が解除され、活動はコロナ前に戻りましたか。
 コンサートもようやく増えてきています。昼夜2回の公演が1回に減ったり、まだ完全には元に戻っていませんが、ステージや生の歌を聴いていただく機会が3年間もなかったことを考えると、お客さんにじかに触れ合える幸せをひしひしと感じます。コンサート以外でも、23年にシングル「再会酒場」、アルバム「酒場のうた」をリリースしましたので、テレビやラジオでのプロモーションや取材などの活動も増えてきています。

深夜放送「睡魔との戦い」

 ――「走れ! 歌謡曲」のパーソナリティーをされていた89年に、当時「トラック日本」という媒体名でしたが、取材しました。
 デビューから3年目で、(ワンマン)コンサートを始めた年でしたので本当に忙しかったです。水曜日の深夜(午前3~5時)の生放送でしたが、地方の仕事から戻ってきてからスタジオに入り、打ち合わせをして本番までの1、2時間に少し休憩といった感じでした。睡魔との戦いは本当にきつかったですね。
 (番組を始めて)ドライバーの皆さんはいつもこの時間、皆が寝ている時に運転されていることを初めて知りました。道路交通情報も自ら伝えていたのですが、読みにくい地名があったりで、一番苦手でした。でも、ドライバーにとって大事な情報なので、この時間はとても緊張しました。

「頑張ろう」と思える歌を

 ――ラジオを通じてのドライバーとの触れ合いといったエピソードはありますか。
 リスナーとの触れ合いは、頂いたお便りくらいでした。ただ、パーソナリティーをする前でしたが、東京都内のトラックターミナルでキャンペーンを行い、トラックをステージにしてドライバーさんの前で歌ったことがありましたね。(女性歌手が男の立場に立って歌う)男歌でデビューしたので、「男くさい職業のイメージのあるドライバーを前に」という発想だったのでしょうか。ただ、仮眠されていたドライバーさんから「うるさい」と言われたりもしました(笑)。
 ――当時、リスナーとのやり取りははがきだと思いますが、ドライバーに対して何か感じることはありましたか。
 こんな時間にお仕事、しかも運転をされていて、眠気とも戦っている、その大変さをすごく感じました。ですので、ラジオから聞こえてくる歌や声に、少しでも「よし頑張ろう」と思っていただけるよう、元気な声、良い歌を届けたい、という思いは強かったですね。
 ――これまで、色々な曲を歌ってきたと思いますが、トラックドライバーをイメージした作品はありますか。
 直接、ドライバーさんに向けた曲はありませんが、男歌はかなり多いですし、人生の応援歌的な作品など「頑張ろう」と奮い立っていただけるような曲はあるかと思います。
 ――演歌以外にも様々な曲を出されてきましたね。
 ビリー・バンバンさんが歌っていた(焼酎「いいちこ」のCMソングの)「また君に恋してる」は、まさにそうですよね。女性のアーティストにも歌わせたいということで、お声が掛かり、「えっ、私に」と驚きました。
 ところが、若い人の支持も頂き、これまでCDでのミリオンセラーはなかったのですが、この曲は400万ダウンロードという最大のヒット曲になりました。うれしいことですが、カバー曲がオリジナル曲を超えてしまったのには複雑な心境もありました(笑)。
 ――個人的には、故忌野清志郎さんと細野晴臣さんと結成したユニット「HIS(ヒズ)」が印象に残っています。

お客さんあっての仕事

 ――宅配便は良く利用されますか。
 通販は利用しますし、お中元・お歳暮に限らず、ファンの方からの頂き物もありますので、本当にお世話になっています。今の時代、宅配なしでは生活が成り立ちません。ただ、ドライバー不足がかなり深刻と聞きます。これからどうなりますか。
 ――政府やトラック業界も再配達削減に向け、協力者へのポイント還元など色々と施策を検討しています。
 それは良いことだと思います。暑い日も、寒い日もドライバーさんは配達に駆け回っていますが、届けに来たのに不在では、とても気の毒です。不在票が入っていると、「申し訳なかったな」といつも思います。
 ――パーソナリティーをされていた頃に比べ、規制緩和が進んだことや、「2024年問題」と言われる残業時間の制限など、ドライバーを取り巻く環境は厳しくなっています。日本の社会と経済を支えるトラックドライバーと物流業界へのエールをお願いします。
 本当に居てくれないと困る、とても重要なお仕事だと思います。労働時間の問題もありますが、まずはドライバーさんのお給料を上げていただきたいです。一生懸命働いても報われなければ、この仕事を目指す人は増えません。
 また、「ご苦労さま」「ありがとう」という一言が、頑張ろうという気持ちにさせます。私も「歌を聴いて元気が出たよ」の一言が大変励みになります。歌手もドライバーもお客さんあっての仕事で共通します。私としては、お客さんに笑顔になっていただける歌を届けられるようますます精進します。
 ――今回は貴重なお話をありがとうございました。(田中信也、北原秀紀、佐々木健が担当しました)


 ▼さかもと・ふゆみ 1987年に「あばれ太鼓」でデビュー。88年に「祝い酒」でNHK紅白歌合戦に初出場し、これまでの出場回数は35回。代表曲に「夜桜お七」「火の国の女」「また君に恋してる」など。故忌野清志郎、細野晴臣とHISを結成するなど演歌以外のジャンルでも活躍。2023年5月に「再会酒場」をリリース。


本紙記者のインタビューに応じる坂本さん

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