モーダルシフト、CN対応で輸送量倍増へ
物流企業
2024/05/10 4:00
物流効率化の具体策として取り上げられることが多いモーダルシフト。カーボンニュートラル(CN、温暖化ガス排出量実質ゼロ)への対応も踏まえ、政府は鉄道と船舶による輸送量の倍増を目指している。一方、1980年代に注目されるようになって以降、進展がないという指摘もある。実運送を担う事業者が利用しやすく、利益を出せる環境をつくれるかが重要になる。(特別取材班)
「40年間進展なし」の声も
政府は2023年10月の「物流革新に向けた緊急パッケージ」で、鉄道コンテナ貨物と内航海運(フェリー、RORO船など)について、「輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増」の目標を掲げ、11月には国土交通省が30年代前半に鉄道コンテナ貨物が年間3600万㌧(輸送分担率0.8%)、内航海運が1億㌧(2.6%)の具体的な数値を示した。
その実現に向け、大型トラックからシフトしやすい31㌳コンテナの利用を増やしつつ、国際海上コンテナとして主流の40㌳コンテナも中長期的に利用を拡大する。シャシーや低床貨車の導入、拠点の整備なども後押ししていく。
日本貨物鉄道(JR貨物)は31㌳コンテナの利用拡大について、25年度までの目標として20年度比11.2%増を掲げている。現状、大型化の推進は堅調。利用運送事業者によるブロックトレイン(BT)がけん引役で、積合せ貨物の増量と労働時間の上限規制によるトラックからのシフトが中心になる。
その流れを受け、全国通運(永田浩一社長、東京都中央区)でも31㌳コンテナの保有拡大の方針を打ち出した。今後10年間で、保有数を現状の5倍となる350個に拡大する予定だ。
日本内航海運組合総連合会(栗林宏吉 会長)もRORO船やコンテナ船のニーズを把握するため、23年11月に定期船輸送特別委員会(久下豊委員長)を発足させた。検討体制を強めることで、24年問題を背景とした船舶に対する需要の現状把握などを行う。
現場利用しやすく
丸吉ロジ(吉谷隆昭社長、北海道北広島市)は、独自に開発した蓋(ふた)のない20㌳のコンテナを使い、本州で鋼材などの鉄道輸送を進めている。荷主からの相談がきっかけで、将来の輸送力不足への懸念を背景に、モーダルシフトの需要が高まりつつある。吉谷社長は「各輸送モードの強み、弱みを補完する仕組みが重要」と話す。
ただ、現場の運送事業者が利用しやすい環境がなければ普及は難しい。経営上十分なメリットがなければ、モーダルシフト以前に長距離輸送からの撤退を選ぶ企業も出てくる。
札幌圏のある運送事業者は、23年末で北海道―本州の運行を終えた。燃料価格やフェリー代の高騰が運賃に見合わなかったほか、労働時間の管理も難しかった。現状、フェリーの乗船時間は全て休息期間となるが、改善基準告示に定める9時間に満たない場合、下船後に補う必要がある。この事業者の社長は「フェリーターミナルなどで乗船を待つ時間も休息期間にできればもう少し負担が少なく済むのに、現状の仕組みでは認められない。実態に合っていないと思う人は多いのでは」と話す。
モーダルシフトが最初に打ち出されたのは1980年代。現在注目が集まっているのは、その後の広がりが十分でなかった裏返しでもある。4月3日の衆議院国土交通委員会で、日下正喜氏(公明、比例中国)は輸送量など倍増の目標について質問し、「モーダルシフトは40年も進んでいない」と指摘。国交省のリーダーシップでコンテナヤードなどのインフラ整備を急ぐよう要請した。必要経費の運賃転嫁の後押しや、関係する法規制の見直しなども含め、幅広い支援も不可欠といえる。
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