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新たな標準的運賃、実運送ファースト歓迎

物流企業

2024/04/30 4:00

 「2024問題」に対応するために告示された新たな標準的な運賃では、「積込料・取卸料(荷役料)」や下請け手数料率などを新たに設定した。トラック運送事業者は、ドライバーの賃上げの原資となる適正運賃収受の環境整備に向け、より「実運送ファースト」の制度になったことを歓迎する。一方、制度開始から4年で届け出率は6割を前に足踏みし、実際に希望する運賃を収受できたケースは1割程度とみられる中、実勢運賃との隔たりがより拡大することへの戸惑いの声も少なくない。(特別取材班)

実勢運賃 隔たりに戸惑いの声

 新しい標準的運賃告示では、物価高を受け、運賃表の水準を平均8%引き上げるとともに、荷役料や共同輸配送を念頭にした「個建て運賃」、多重下請け構造の是正に向けた下請け手数料の料率などを新規に設定した。
 三共陸上輸送(川崎市川崎区)の鈴木雄三社長は「運賃水準が上がることで、荷主との交渉で適正運賃を提示しやすくなり、要望を伝える際の根拠として大いに役立つ」と歓迎。木津運送(白山竜太郎社長、大阪市住之江区)の西村英二常務も「物価が高騰する中、料金が上がるのはありがたい。荷役料の追加も、料金収受を促すきっかけになるかも」と期待を示す。
 旧来の告示では、距離制と時間制の運賃表がメインで、こと料金に関しては待機時間料のみだった。新たな告示では、リードタイムが短い運送や、有料道路を利用しない場合の運賃割増率なども設定。荷主に対して厳しい要求を突き付ける中身へ大きくリニューアルされた。
 フレンズ運送(群馬県太田市)の滝澤将司社長は「サービスで荷役作業を行っているケースが多い中、きちんと対価をもらうべきという大きな証拠になる」として、「メディアがもっと大騒ぎしてもらえるよう、どんどんやってほしい」と話す。
 新鮮便(伊勢崎市)の佐藤稔也社長は「荷待ちにスポットが当たり過ぎな気はする」とした上で、「(荷役作業などの)数字(料金)を明確化したことは、業界全体で考えると、直接荷主も巻き込めるという点で良い」と評価する。
 それに加えて、佐藤氏は「運送の多層構造に本気でメスを入れるつもりなのがうかがえる。直接荷主と交渉できないが、実際に日本の物流を支えている(中小・零細の実運送)事業者向けには良いことだ」と言及する。
 しかし、標準的運賃の普及・活用の状況をみると、バラ色の未来が約束されているとは言い難い。対象事業の導入割合は、2月末時点で58.5%となっている。20年4月の告示から2年半で過半数に達したが、その後は足踏みし、ここ数カ月はゼロコンマの微増が続く。
 滝澤氏は「標準的運賃はベースとして必要だが、この水準の運賃を頂けるとは思っていない」と指摘。佐藤氏も「標準的運賃と契約額の隔たりはかなりある」と本音を漏らす。

一定の強制力「必要」

 中小・零細事業者には至れり尽くせりな内容が、実際の導入に当たってはむしろ「仇(あだ)となる」可能性がある。西村氏は「現状では、従来の標準的な運賃で示された料金を収受するのは難しい。一定の強制力を持たせる取り組みも進めてほしい」と話す。
 また、実運送ファーストの制度でも、実際に荷主と交渉するのは元請事業者だ。トラック業界側の商慣行に蓋(ふた)をしたまま、数次にわたる下請けへの手数料を上乗せした運賃を荷主側に納得させるのは理にかなわない。全日本トラック協会が2月に提言した「2次下請けまでの制限」といった多重下請け構造の解消とセットで進める必要もある。


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