物流DX・標準化②、省力化むけ技術革新進む
産業
2024/05/17 4:00
働き手不足が進む一方、省力化に向けた技術革新も進む。政府が「物流革新に向けた政策パッケージ」で主要施策に打ち出す物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進では、自動運転の実現や、ドローン(小型無人機)・自動配送ロボットといった最新型技術の活用を掲げている。(田中信也、原田洋一)
自動運転レベル4 27年ごろ移行めざす
自動運転技術の活用に向け、政府は2025年度以降に物流サービスでの実用化の方針を打ち出した。レベル4(特定条件下での完全自動運転)を「特定自動運行」として新たに位置付ける改正道路交通法を23年4月に施行。また、24年度に新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリア(SA)―浜松SAの区間に深夜帯限定で自動運転トラックの専用レーンを設置する方針を打ち出した。
こうした構想を具体化するため、三井物産などが出資するT2(森本成城社長兼CEO=最高経営責任者、東京都千代田区)で、自動運転トラックの幹線輸送サービス実現に向け、新東名での公道実証と、多様な事業者とのパートナーシップ構築を進めている。
同社はサービスプロバイダーではなく、実運送事業者として事業に参画する。「31年には2千台レベルにしたい」(森本氏)との構想を持つが、まずは専用レーン設置までに5、6台の車両を投入し、「25年中にレベル2(特定条件下での自動運転機能)での事業開始」を計画。レベル4への移行は27年ごろを目指すが、三菱地所が京都府城陽市などで計画する次世代型基幹物流施設の完成が「カギを握る」としている。
改正道交法では、レベル4とともに低速・小型の自動配送ロボットが「遠隔操作型小型車」として公道走行が認められた。これを受け、パナソニックホールディングスが7月から神奈川県藤沢市の住宅街と、東京都千代田区のオフィスビルの敷地内で日本初の道交法に基づく実証サービスをスタート。その他の地域でも低速・小型配送ロボでの実証が展開されるが、最高時速6㌔以下で、歩道、路側帯などに走行が限られるため、積載量や配送区域に限界がある。
このため、経済産業省などは、より配送能力が高い、中速・中型の自動配送ロボットの実用化を検討。「年間約1千億円の経済効果」「宅配業界などの労働力不足で運べなくなる荷物の約9%を補える」と試算する。
採算性確保ネック
ドローン物流に関しても、全国各地で実証実験が行われ、長野県伊那市などで商業化したケースもあるが、最大のボトルネックは採算性の確保。国土交通省は23年度に全国9カ所で実施した実証事業を踏まえて費用対効果を検証し、配送1回当たりで、トラックなどによる現行の輸送形態の7倍以上のコストが掛かることが分かった。
コスト削減には、22年12月に解禁されたレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が不可欠だが、これに加え、「ドローンポートとの連携、1人の操縦者による10機以上での同時運航(多運航)、宅配車両との連携などが必要」(物流・自動車局物流政策課)と分析している。
地方も積極的に動く。長野県は23年9月、産官学の関係機関で構成する「信州次世代空モビリティ活用推進協議会」を立ち上げた。山岳・湖沼・過疎地で蓄積した運航のノウハウを都市部での活用に移行することで物流網の維持を狙う。実現に向けたロードマップには「事業負担を軽減する資金調達スキームの構築」を盛り込み、金融機関やベンチャーキャピタル(VC)のサポートを受けやすい環境整備にも取り組む。
これら革新的技術は一朝一夕に実用化できず、ニーズも限定される。しかし、高齢化社会が避けられない中、スタートアップなどの力を借りて導入を目指すことは不可避といえる。
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