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軽貨物事業適正化、参入増加し事故件数⤴

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行政

2024/05/28 4:00

 「2024年問題」に対応するドライバーの労働環境改善の流れは、急拡大するEC(電子商取引)向け貨物を運ぶ貨物軽自動車運送事業者にも及ぶ。軽トラックの交通事故が急増する中、国土交通省は「軽貨物安全管理者」の選任などを柱とした安全対策の強化策を打ち出した。こうした施策を進め、一般貨物運送事業のように事業者と連携したコンプライアンス(法令順守)体制構築を目指す。(北原秀紀、高橋朋宏、佐々木健)

国交省、安全対策を強化

 事故急増の背景には、軽貨物事業への参入増加がある。事業軽貨物自動車の登録台数は、19年度の25万4028台から、21年度には19年度比13.5%増の28万8226台へ増加。軽貨物以外の営業用貨物自動車は1.9%増にとどまっている。
 その間、軽貨物自動車を第1当事者とする交通事故も増加した。死亡・重傷事故でみると、19年の282件から、21年には19年比29.4%増の365件に増加。軽貨物以外では19年の1206件が21年は11.7%減の1065件にとどまっており、軽貨物事業の安全対策の必要性を浮き彫りにしている。
 国交省は23年3月から1カ月程度、安全管理の実態に関するアンケートを実施。首都圏と近畿圏の貨物軽自動車運送事業者1万者から無作為に個人事業主を選出し、772者から回答を得た。
 運行管理について、「点呼時のアルコール検知」を「実施していない」が25%、車両整備では「日常点検」「12カ月定期点検」を「実施していない」「実施できていない」が計30%。改善基準告示の順守も「基準は理解しているが順守していない」が25%、「基準を知らない」は14%だった。
 4月26日に成立した改正貨物自動車運送事業法では、①営業所ごとの「貨物軽自動車安全管理者」の専任②死傷事故や一定規模以上の事故時に運輸支局・運輸局を通じた報告の義務付け③行政処分の公表④運転者への適性診断の義務付け⑤「日報」などの業務記録の保存作成――と、一般貨物運送事業者と同様の措置を規定している。
 個人事業主が最低保有台数5台以上の事業者と同じ対策を講じられるのか。いかに義務化を周知し、日々の活動を改善・指導していくのか。個人事業主に順守してもらう仕組みが必要となる。

法令順守で差別化

 個人事業主の組織化が行き渡っている全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会(川井博義会長)では、7千人の組合員を抱える。3月の全国理事長研修会では、法改正の情報を提供。「個人事業主の場合、安全管理者は事業者本人になると聞く。組合員に責任を持って対処するよう指導したい」(事務局)とする。
 一方で、一般貨物運送事業では企業体で進める安全対策を、個人事業主が漏れなく対処するのは困難だ。国交省に対し、2年ごとの受講義務が想定される管理者定期講習で「損保会社などの提供カリキュラムをオンラインで受け、要件を満たせる体制を整えてほしい」と訴えている。
 デジタル化に意欲的な全国軽貨物協会(西田健太代表理事)は、「軽貨物パスポート」という独自のドライバー認定制度の運用準備を進める。パスポートについて、西田代表理事は「軽貨物の関連法令、個人事業主の関わる法令と権利義務、マナー一般をeラーニングで提供する仕組み」と説明。管理者定期講習などの義務化に対して賛意を示し、「実施機関に認定されるよう対応カリキュラムを組み込みたい」と話す。
 同協会は、全国各地の軽貨物企業などが集まる団体の「事務局」という位置付けだ。23年11月に全国規模で懇親会を開催し、赤帽を含めた十数者が参加。全軽協では法改正と安全対策義務化を、貨物軽自動車運送事業者の社会的認知向上のチャンスと捉えている。コンプライアンスによる個人事業主の差別化という、新たな競争が始まろうとしている。


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