全ト協事業者大会、明るい未来へ向かって 一丸となり難局突破
全日本トラック協会(星野良三会長)の第20回全国トラック運送事業者大会が1日、金沢市で開かれ、全国から1400人が出席した。荷主との協働による長時間労働の削減、高速道路料金における大口・多頻度割引率最大50%の恒久化、大規模災害発生時の緊急輸送体制の確立など諸課題の解決に向け、一丸となって難局を突破していくことを誓い合った。(渡辺耕太郎) 星野会長が「9月30日、13回目のトラックの森記念植樹式が石川県の森林公園で行われた。植樹を通して、地球温暖化防止、環境保全の意識向上にトラック事業者として貢献していきたい」とあいさつ。 また、「トラック業界は人手不足に加え、労働時間規制の強化などにより、長距離輸送からの撤退、運送コストの高止まりが続いている」と指摘。「荷主の理解と協力を得ながら、長時間労働問題の解決に取り組んでいきたい。明るい未来へ向かって、頑張ろう」と強調した。 開催地を代表して、北陸信越ブロックトラック協会の小林和男会長が「1400人余りの皆さまにお越しいただき、心より感謝を申し上げる。北陸新幹線が3月に開通し、絶好の時期に金沢で全国大会を開催できたことをうれしく思う。依然として厳しい状況にあるトラック業界だが、結束を固め、乗り切っていこう」と呼び掛けた 小林氏を議長とする議長団を選出。第1分科会と第2分科会に分かれ、それぞれ「トラック業界の交通安全対策の推進」「トラック業界の人材確保及び育成」をテーマに、パネリストによるプレゼンテーションで議論を深めた。 記念講演では、和倉温泉の老舗旅館、加賀屋の小田貞彦相談役が「おもてなしの心で世界をねらう」と題して講話した。 全体会議の再開後、石川県トラック協会青年部会の坂池克彦部会長が、原価管理に基づく適正運賃の収受、法令順守の徹底、交通・労働災害事故の防止及び環境・省エネ対策の推進――など8項目の大会決議を読み上げ、全会一致で採択。長時間労働の縮減を目指し、手待ち時間の削減や付帯業務の有償化に向け、運送業界の総力を挙げて取り組む決意を新たにした。 石川県の谷本正憲知事が祝辞を述べるとともに、国土交通省の藤井直樹自動車局長が太田昭宏国交相のメッセージを代読。続いて、次回開催地を代表し、中国トラック協会の小丸成洋会長が「1年かけて、しっかりと準備していく。米子でお会いしましょう」と歓迎メッセージを述べた。第21回大会は2016年10月6日、鳥取県米子市で開催される。 石川県トラック協会の田内満喜夫副会長が音頭を取り、「ガンバロー」コールを唱和。富山県トラック協会の綿貫勝介会長は「この大会で一致団結できたことを心から感謝したい」と全体会議を締めくくった。 【写真=「荷主の理解と協力を得ながら長時間労働問題の解決に取り組んでいきたい」と星野会長】
京都府京丹後市は1日から、地域再生計画の一環として、電気自動車(EV)を活用した少量の貨物運送、買い物代行などのサービスを提供する新たな乗合デマンド型のタクシー輸送事業を開始した。(小菓史和) 9月30日に行われた出発式で、中山泰市長が「2012年度に久美浜町、翌年には網野町で民間タクシー事業が廃止され、住民から不安や不便を訴える声が上がっていた。多くの人に利用してもらい、愛され、育てていただけるEV乗合タクシーとなることを心から祈念する」とあいさつ。 近畿運輸局自動車交通部の金指和彦部長も「近運局では構想段階から関与している。現行のタクシーによる救援事業、路線バスの少量貨物輸送の双方がEV乗合タクシーで可能になった。京丹後市は、このほかにも200円バスなど公共交通の先進的な取り組みを進めている。今後も活性化に尽力して欲しい」とエールを送った。 同市は14年、国の地域活性化モデルケースとして「グリーン・ウエルネス新公共交通体系の構築とそれを核とした環境調和・健康未来創造スマートコミュニティの実現」を近運局に提案。採択され翌年には改正地域再生法に基づく地域再生計画の第1号として認定を受けた。更に、規制緩和も視野に、地域の活性化につながり、人と環境に優しく利便性の高い新たな輸送サービスの実現に向け、近運局と議論を重ねてきた。4月に国から規制緩和の通達が出されたことを受け、いち早く準備に着手。EV乗合タクシーの運行開始にこぎ着けた。 中山氏は「全国の先陣を切る形で、人だけでなくモノとサービスを運ぶ新たな輸送が明日から開始される。新たな公共交通体系の構築に向けた大きな一歩を、地域の皆さんと祝いたい」と述べた。 この後、タクシーを運行する丹後海陸交通(小倉信彦社長、与謝野町)のドライバーにジャンボキーを贈呈、拍手られ出発した。 【写真=拍手に送られ出発する丹後海陸交通のEVタクシー】
【広島】今井運送(高西宏昌社長、広島県廿日市市)は、ブルーペッパー(堂下久泰社長、群馬県太田市)と提携し、トレーラの台車を奈良市で交換するスイッチ輸送を強化する。月からテストし、月から本格的に始めたが、ドライバーの労働時間短縮に効果を上げていることから、提携する業務を拡充する。また、別の同業者数社とも近く関西―九州でスイッチ輸送のトライアルを行う計画で、コンプライアンス(法令順守)を徹底しながら人手不足にも対処していく。(江藤和博) 【写真=井運送のトレーラ(今後はスペックも統一し、相互利用の幅を拡大する方針)】
【神奈川】萬運輸(東海林憲彦社長横浜市鶴見区)は10月から、ドライバーの子供が描いた絵を車体にプリントしたデザイントラックの運行を始めた。自分の子の絵を車体に描くことで、父親であるドライバーの安全意識を高めるとともに、トラック業界のイメージアップを図る。 小山営業所(栃木県小山市)の大型ウイング車1台にプリントを施した。同営業所所属の3年間無事故・無違反のドライバーの専属車で、新車への代替を機にドライバーの3人の子供が描いた絵をプリントした。 絵は、夏休みの思い出や父親の似顔絵、トラックの絵、運転マナー向上を呼び掛けるものなど様々だ。 同社グループの自動車整備会社が保有するオートボディープリンターを使って塗装。ラッピングよりも低コスト・短工期で塗装でき、何度も書き替えができるのが特徴だ。 「子供の書いた絵をプリントすれば、パパは危険な運転をしなくなる」との発想に基づき始めたもので、優良ドライバーには好きなデザインを車体に施せるようにする予定。安全意識向上とともに、トラック業界のイメージアップとトラックに対する親近感を高める狙いもある。 東海林社長は「家族の力を借りて、企業イメージ向上や地域貢献を実現したい。ドライバーにも『デザイントラックを運転する自分は、安全ドライバーである』というステータスを持ってもらえれば」と話している。(吉田英行) 【写真=安全意識を高めるとともに、トラック業界をイメージアップ】
倉庫や物流センターの害鳥駆除を手掛けるウィングヤマグチ(安田諭司社長、福岡市中央区)が開発した、特殊レンズの視覚効果で害鳥を追い払う「撃退ドットマン」の導入が大手物流企業や飼料メーカー、電力事業者、鉄道事業者、携帯電話会社などで進んでいる。(上田慎二) 特殊なドット(点)柄と偏視覚レンズの組み合わせで鳥の視覚を混乱させ、設置箇所に近付けないようにする仕組み。プレート(またはテープ)状のドットマンは、簡単に切断、加工、取り付けでき、防鳥ネットよりコストを低減できる。 ザインは、自然界で警戒色とされる黄色と黒の組み合わせ。距離感をつかめない3Dレンズで、鳥が装置に慣れることを防ぎ、駆除効果は継続する。 設置キット(ワイヤー、金具)や、販売代理店による施工サービスで、鉄骨、屋根、橋梁(きょうりょう)など、様々な場所、資材に取り付けることができる。 鳥駆除の新技術として、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」、首都高速道路(菅原秀夫社長東京都千代田区)の新技術活用システム、福岡県、福岡市、宮崎県の新技術紹介制度に、それぞれ登録されている。 安田社長は「食品や飼料を扱う倉庫や物流センター、糞(ふん) 害による金属の腐食を恐れる鉄鋼メーカーからの合いが増えている。害鳥は家畜や人の伝染病の原因としても懸念されており、職場の衛生改善に役立てて欲しい」と話している。 【写真=倉庫内に取り付け害鳥をシャットアウト】
国土交通省と東日本高速道路(広瀬博社長、東京都千代田区)は9月29日、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)・桶川北本インターチェンジ(IC)―白岡菖蒲IC(延長10.8キロ)が10月31日に開通する、と発表した。今回の供用開始により、東名高速道路から東北自動車道までがつながり、企業活動などの活性化を支援するストック効果が期待されている。 同区間には桶川加納IC、菖蒲パーキングエリア(PA)も開設。桶川加納ICでは県道川越栗橋線に接続する。国道17号上尾道路と川越栗橋線、国道122号経由で1時間近くかかっていた桶川北本IC―白岡菖蒲ICが10分弱で結ばれるほか、東北道と接続する久喜白岡ジャンクション(JCT)から神奈川県茅ケ崎市までの所要時間も55分短縮される見通し。 国交省によると、関西・中部方面と東北方面から関東圏を通過する地域間物流は年間4800万トンに上り、営業用貨物車の平均積載量4.7トンで換算した場合、1日当たり4万台。混雑する東京都心をう回する圏央道経由のルートが選択できるようになる。 また、埼玉県内の圏央道沿線地域の新規企業立地は2005年1月から15年3月末までに延べ462件となり、新規雇用の増加や配送体制の効率化につながったとしている。(小瀬川厚) 【写真=建設区間では急ピッチで仕上げ工事が進む(桶川加納IC付近、8月21日)】
【福島】郡山運送(小野田弘明社長、福島県郡山市)は9月16日、県立石川養護学校でトラックを使った交通安全教室を開いた。大型車両が関わる様々な事故などを再現して、交通ルールの順守とマナー向上を呼び掛けた。 教室は、社内の安全意識高揚と地域社会への奉仕活動として初めて開いた。社員に同校卒業生がいたことから教室開催を申し入れ、快諾を得た。大関彰久校長は「実際の車両を使った安全教室は初めてで、本当にありがたい。卒業生がドライバーとして活躍しており、在校生にも勇気を与えられる」と歓迎する。 高等部の生徒46人が参加。社員13人が校庭に模擬の道路や交差点、信号機などを準備し、司会進行も担当した。 はじめに4トン (ウイング)車を使って時速60キロメートルで1秒間に16.7メートル走ることを伝え、遠くに見える車両でもすぐに近づくことの危険性を強調。更に、停止位置からバックして急ブレーキを掛けた時の停止距離の長さを確認し、注意を促した。 このほか、交差点での左折時の巻き込み事故を再現し、死角の大きさ確認を訴えた。巻き込み事故では段ボールを人に見立てて、内輪差によって接触することを説明した。生徒たちからは段ボールが倒れ、潰れる瞬間を見て、驚きの声が上がった。 小野田社長は「楽しい学校生活が送れるよう、交通事故には十分に気を付けてくたさい」と交通ルールの順守を呼び掛け、生徒代表に記念品をプレゼントした。(富田久男) 【写真=段ボールを使って交差点での巻き込み事故を再現】
【栃木】北関東運輸(石塚譲司社長、栃木県大田原市)は米穀用の冷蔵倉庫を増設し、9月下旬から営業を開始している。 黒磯低温倉庫(那須塩原市)に増設した。敷地面積5800平方メートルで、延べ床面積1560平方メートルの既存倉庫があるが、新たに延べ床面積1360平方メートルの倉庫を設置。9月上旬に引き渡され、冷やし込みなどの準備作業を進めている。 倉庫は温湿度管理機能を装備。常時、温度はセ氏15度、湿度は60%以下になるよう管理している。また、LED(発光ダイオード)照明を採用し、環境にも配慮した。既存倉庫では政府米を保管し、新倉庫は「なすひかり」や「コシヒカリ」などの食料米と共に、飼料米を扱う。 石塚社長は「政府が県内の飼料米の作付け面積を拡大しており、新たな需要が出たことから倉庫増設を決めた。県北地域は低温倉庫が少なく、需要は高い」と話している。(佐々木健) 【写真=冷やし込みなどの準備作業を進める】
オフィス用品などのデリバリー大手、アスクルは9 月28日、物流拠点「ASKUL Logi PARK首都圏」(埼玉県三芳町)に精米センターを新設した、と発表した。個人向けの日用品ショッピングサイト「LOHACO(ロハコ)」で、10月14日から精米サービスの提供をスタートする。「ろはこ米」として毎日100袋の限定販売を開始するに当たり、最新精米機を備えた「アスクルライスセンター」を設置。商品の出荷日に精米して最短で翌日に届ける。顧客の鮮度ニーズに対応するため、冷蔵庫で保管しやすく開閉も簡単なジップ袋を採用。容量は小分けの2キロと5キロの2アイテムを用意する。(沢田顕嗣) 【写真=ライスセンターを設置したASKUL Logi PARK 首都圏】
日本トラックリファインパーツ協会(JTP協、宮本真希理事長)は2015年度、より信頼性の高い商品提供に向け、研究・開発に力を入れる。車両の電子制御化が進み、性能も格段にアップしていることから、将来の対応策を検討する専門プロジェクトを設置。良質な部品の追求だけでなく、環境保全にも寄与する製品づくりを心掛ける。 車両を取り巻く状況は日進月歩が顕著で、従来のメカニックに関する知識や技術だけでは、解決できない問題も増えてきた。これに対処するため、新たに「トラック未来研究所」を組織内に設けた。現時点では、メンバー同士の情報交換をベースにスキルの向上に努めているが、今後は大学関係者やIT(情報技術)技術者らにも参加してもらい、更に強固な体制にしたい考え。 日本自動車工業会(池史彦会長)や日本自動車車体工業会(渡辺義章会長)と連携し、取り壊しが容易な車両づくりに関わってきた。その際はリサイクルの推進へ、常に素材の分別にも配慮している。 6月に行った意見交換会にも、両団体のメンバーが出席。事前にタンクローリー車の分解作業を見学し、運搬していた貨物の危険性を互いに認識、共有することができた。 また、独自開発した検査機器の改良にも取り組む。電子制御ディーゼルエンジンの単体始動テストができる試験機「Σe-Star(シグマイースター)」で、使用の可否をチェックするだけでなく、実際の車両で使っていた状態に限りなく近づけるため、詳細なデータの収集、分析ができる機能を高める。 谷口正幸専務は「中古車の部品をリユースするので、昔の知識で大丈夫のように思われるかも知れないが、近年は本当に車両の進化が目覚ましい。今から始めておかないと、10年後はどうなるか分からない。常に勉強し、最高の商品をつくり上げたい」と話している。 JTP協は、トラックのみに取り扱いを特化し、車両解体後の中古部品を販売する全国組織。互いのパーツ情報を把握、融通し合う「らくだネット」を展開しユーザーに幅広く情報提供している。(河野元) 【写真=6月には意見交換会の前に、車両解体作業を見学】