労働時間改善の地方協議会、全都道府県で発足 地域の実情即し検討
国土交通、厚生労働の両省が主催する、トラック輸送における長時間労働と取引環境改善の地方協議会は、13日の新潟県を皮切りに、8月中には全都道府県で発足する見通しだ。一般論ではなく、地域の実情に則した検討が期待されるが、前身のトラック輸送適正取引推進パートナーシップ(PS)会議の延長線に位置付ける都道府県もあり、地域間で温度差がみられる。労働環境改善の「最後のチャンス」とも期待されており、地域の「本気度」が問われる。 今国会に提出中の労働基準法改正案では、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率50%を2019年4月から中小企業にも適用することが盛り込まれている。総労働時間の長いトラック事業では割増賃金の適用に当たり、手待ち時間の発生といった、業界の努力だけでは解決できない問題に取り組む必要があるため、両省をはじめ関係行政機関、トラック業界、荷主企業・団体などが参加する協議会を中央と各都道府県に設置。18年度までの4カ年で検討を重ねていく。 中央では、5月20日に国交、厚労両省と経済産業省、全日本トラック協会(星野良三会長)、荷主団体などからなる協議会(野尻俊明座長、流通経済大学学長)の初会合が開かれ、取り組みがスタートしている。 一方、都道府県単位の地方協議会は、取引環境・労働時間改善に関する「総論」ではなく、地域での具体的な長時間労働の実態を踏まえた「各論」に踏み込み、根本的に改善していくために設置する。 都道府県労働局や運輸支局、都道府県ト協が主体となり、経済団体代表や各地方での主要な荷主企業が参加。中央協議会発足時には、7月までに全都道府県で立ち上げ、3カ月〜半年のペースで開催する方針を示していた。 発足に向けて現在、委員の選定や議題の確認など最終調整が進んでいるが、本紙取材により17県の開催日程が判明した。現時点では、新潟県が全国のトップを切って13日に開催する予定。その後、23日に広島、27日には山形、福島、千葉、富山、鳥取が同時に立ち上げるなど順次発足し、8月中には全都道府県で出そろう見通しだ。 初会合では、委員の顔ぶれ、特に、どの荷主企業が選出されたかに興味が集まる。国交、厚労両省は「主要な荷主企業」としているが、地域の模範的な企業ばかりでは、実態に則した検討が進められない可能性がある。 荷主企業の代表は、都道府県労働局が選定することとなっている。ただ、PS会議を踏襲するため、このメンバーがほぼ引き継がれるケースが少なくないようだ。富山では、不二越、YKKAP(堀秀充社長、東京都千代田区)などPS会議と同じ5社から委員が選ばれる見通しだ。 ある県では、その地方を代表する小売チェーンに対し委員就任を打診したが、「日程が合わないことや、直荷主では無いことを理由に断った」(県ト協関係者)という。この企業に関する物流は長時間の荷待ちなど問題が多く、課題の検討に最適だったが、別のアプローチへの方針転換を余儀なくされた。 このほか、地域を代表する大手メーカーに断られた県もある。また、メーカーの地域子会社や支社などは最終的な決定権を持たないケースが多いため、検討結果に対する実効性確保という点で疑問符が付く。選定された荷主企業を見れば、各地域の「本気度」がある程度測れそうだ。 地方協議会の前身となるPS会議は、地方運輸局単位のエリア会議と、都道府県会議を立ち上げ、最終的に7年間でエリアが延べ69回、都道府県は117回開催された。 都道府県会議は、運輸局のある都府県でエリア会議との合同開催を認めるほかは、原則、全て発足させる方針だった。だが、長野、静岡の両県は最後まで設置できなかった。 また、神奈川、福井、島根、山口、佐賀県がほぼコンスタントに5回開いたのに対し、岩手、福島の両県は10年に1回開催したのみ――など対応が分かれている。 ある関係者が「PS会議では『今度は何を議題にしようか』と頭を悩ませることが多かった」と打ち明けるように、発足から時間を経たことで、マンネリ化、形骸化していたことは事実。これに対し地方協議会は、「取引環境と長時間労働の改善」という明確なテーマがあるため「協議が進めやすい」と評価している。 地方協議会の初会合では、全国のトラック事業者に対して行う、長時間労働の実態調査の送付先を確定。調査結果を踏まえ今年度末までにパイロット事業の実施内容を固める流れだ。 「長距離輸送での労働時間管理は崩壊状態で、将来ビジョンが描けない」といった閉そく状況の中、運輸、労働の両行政官庁がタッグを組んだ協議会に対する業界の期待は大きい。検討に対する実効性を担保する上で、地方協議会を適正に運営できる否か――がカギを握っているといえよう。(田中信也、黒田秀男、佐々木健、河野元、俵箭秀樹、奥出和彦、江藤和博、矢野孝明、武原顕、上田慎二) 【写真=PS会議の延長線と位置付ける都道府県も(新潟のPS会議=2月25日)】
【福島】丸三グループ物流連絡会(鎌田武雄会長)は6月27日、乗務員研修会を開き、巻き取り原紙の荷役作業の手順を確認するとともに、荷崩れや転落防止の実技訓練などを通じて安全作業の徹底と意識高揚を図った。 同会は、丸三製紙(三田計社長、福島県南相馬市)が生産する紙製品や古紙原料の安定輸送を目的にした輸送協力会で、会員は8社。毎年、巻き取り原紙の荷役作業やドライバー教育、健康管理などに関する研修会を開いている。今回は幹事会社の丸カ運送(佐藤信成社長、同)の本社倉庫を会場に実技指導を行った。 鎌田会長は「運送業界では荷役作業中の転落・墜落事故が多発傾向にある。基本に徹する作業を実践し、安全で安定した輸送サービスで顧客の信頼に応えていこう」と呼び掛けた。 丸三製紙は今春、新型マシーンが稼働し、年間6万5千〜7万トンの生産体制を構築。原料となる古紙供給量も増え、東日本大震災以前より輸送需要が増大している。 はじめに、熱中症予防対策とグルーブ製紙工場内で起きた荷役事故事例などを説明。再発防止に向けた安全管理体制の強化と作業手順を再確認した。 続いて、1ロール1トンを超える巻き取り原紙の荷役作業を実践。レンゴーロジスティクス福島営業所の作業担当者が指導役を務め、ジョロダー棒を使った積み下ろしや電柱積み(並列横積み)を行いながら作業手順を解説し、安全確認の徹底を促した。特に、荷台後方からの荷下ろしでは、最後部より1.5メートル手前でテコ棒や歯止めを使いいったん停止。安全確認後、次の作業に移るなど、基本手順の励行に心掛け、転落や手足の巻き込み事故を未然に防ぐよう注意を喚起した。 鎌田会長は「物流センターなどでは荷役作業の機械化が進んでいるが、配送先によってはスペースが狭かったり、荷役機械が少ないこともある。いまだに手作業での荷下ろしも多く、新人だけでなくベテランにとっても手順を再確認する絶好の機会だ。今後も内容を充実させていきたい」と話した。(富田久男) 【写真=ジョロダー棒を使い積み下ろしを指導】
セイノー商事(一柳正義社長、岐阜県大垣市)は6月29日、朝日大学(瑞穂市)の学生らと共同で企画・開発したサマーギフト商品を発表した。 セイノーホールディングスが同大と行っている産学連携活動の一環。グループ企業のセイノー商事は、経営学部ビジネス企画学科の学生と、県特産品を使った通販用詰め合わせセットの開発に取り組んでいた。 同日の発表会で披露された「柿のお茶会」は、3種の富有柿スイーツ、県産の紅茶、敷き紙として利用する美濃和紙をセットにしたもの。 商品開発に携わった学生によれば、スイーツが紅茶と一緒に楽しめることを考えた上で、美濃和紙で高級感のアクセントを加えたという。 価格は3450円で、今年のサマーギフトとして販売する。(星野誠) 【写真=朝日大学と共同開発した「柿のお茶会」】
阪急阪神エクスプレス(岡藤正策社長、大阪市北区)は1日、阪急阪神ホールディングスグループがシンガポール西部地区で物流倉庫を新設する、と発表した。延べ床面積4万8千平方メートルは、同グループ最大。阪急阪神エクスの現地法人が入居し、倉庫業務や輸配送など物流サービスを手掛ける。 シンガポールでは2件目の倉庫となり、経済成長が見込まれる東南アジア諸国連合(ASEAN)のハブ拠点として、多様な需要に対応していく。 傘下の阪急電鉄(中川喜博社長、同)と阪神電気鉄道(藤原崇起社長、福島区)が共同で設立した現法が、6月に現地政府から土地使用の許可を取得した。建設費は6500万シンガポールドル(約59億円)。今秋ごろ着工し、2017年春にも稼働させる。 敷地面積1万9200平方メートル、9階建てで、延べ床面積は4万8千平方メートル。上層階には、通常よりも狭い通路にすることで収納力と作業効率を高めた「VNAラックシステム」を採り入れる。低層階には空調フロアを設置。冷蔵設備の導入を可能にすることで、電子部品や医療・ヘルスケア機器、医薬品、EC(電子商取引)商品など多様な品種を取り扱えるようにした。 市内や既存の港湾地区からのアクセスに優れているほか、現地政府が27年をメドに整備を進める新港にも近い。このため同グループでは、新倉庫をASEAN(東南アジア諸国連合)エリアのハブ拠点と位置付け。増加していく需要に対応し、新たなマーケットも取り込むことで、海外物流事業の強化を図る。 シンガポールには既に阪急阪神エクスが1万2千平方メートルの拠点を持つほか、インドネシアでは年内にも阪急阪神HDグループ初となる自社倉庫の完成を控える。(土屋太朗) 【写真=9階建てで、17年春にも稼働(完成予想図)】
安田倉庫のグループ会社で、物流資材開発やコンサルティングを手掛ける日本ビジネスロジスティクス(JBL、千葉禎美社長、東京都港区)は、ネステナー用の新中間棚を開発し、年内にもパレットメーカーなどを通じて発売する。ネステナーを使用した庫内保管の効率を高めるもので、安田倉庫の現場での5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動から誕生。有効に使えていない「デッドスペース」の解消や安全性の向上につながるため、医療品や精密機器分野での需要を見込む。(吉田英行) ネステナーは庫内を有効活用するための移動・折り畳みが可能なラック。物流現場ではネステナーを積み重ね、段積みできないパレタイズ商品を保管しているケースが多数みられる。 その際、ネステナー内にフックを取り付けてパレットを載せ、中間棚として使っていることが多い。ただ、パレットは厚さが15センチ程度あり、フックなどを含めると30センチ以上の空間ロスが生じる。また、フックはパレットを固定していないため、落下の危険性が高い。加えて、パレット本来の使い方ではないため、強度不足によるたわみの恐れがある。パレットの隙間にほこりがたまると、衛生的にも問題となる。 新開発の中間棚は、樹脂製で厚さ0.5センチ。フックではなく、ネステナーにクランプを取り付けて3本のスチールフレームを固定し、その上に中間棚を載せる方式となっている。クランプにスチールフレームをはめ込み、中間棚はL字曲げでロックする構造のため、落下の危険性がほぼ無い。中間棚とフレームを合わせても厚さは5センチ程で、ネステナー内のデッドスペースを削減できる。 組み立てに必要な時間は4分で、作業は一人で行える。パレットと異なり新中間棚には隙間が無いため、ほこりがたまることは無く、安全性・耐久性の向上に加え、衛生面でもメリットがある。 新中間棚は安田倉庫の物流現場での5S活動から生まれたもので、現場での運用試験を経て実用化した。JBLでは、医薬・医療品や精密機器の保管などでニーズがあるとみており、初年度は千セットの販売を見込む。 JBLの新津昭夫取締役は「安田倉庫の20の現場での5S支援と改善があるからこそ実用化できた製品。物流センター内の流通加工業務では荷主が常駐している場合があるが、荷主へのアピールにもなる」と話している。 【写真=新中間棚(右)を採用した場合、デッドスペースが削減され保管効率がアップ】
【愛媛】愛媛県トラック協会(一宮貢三会長)は6月23日、陸上自衛隊松山駐屯地で、退官予定の自衛隊員にプレゼンテーションを行い、トラック業界への就職を呼び掛けた。自衛隊愛媛地方協力本部の要請に応えたもので、初の試み。 任期満了や定年を迎える陸上、海上、航空の各自衛隊の退官予定者で、県内の民間企業への就職を希望する20〜50歳代の男性18人が参加した。愛媛ト協の板倉友弘事務局長は、運送会社の社会的役割や関係法令、課題と解決への取り組みなどを紹介。「仕事の達成感と魅力のある産業を目指している。ドライバーの高齢化が進む中、新しい力が必要だ」と訴えた。 愛媛地方協力本部ではこれまで、業界団体や企業に出向いて退官者の雇用促進活動を行っていたが、今回初めて、愛媛ト協と建設業界団体、流通小売大手の3者を招いた説明会を企画した。天本博文本部長は「国民生活に欠かせないインフラの一つである物流が、人手不足で困っていると聞いている。就職先の候補として、隊員にトラック業界に関する資料を提供したいと考えた」と話している。(矢野孝明) 【写真=退官予定者に運送会社の社会的役割などを紹介】
【新潟】北陸地方整備局は6月23日、津川警察署と協力して違法トラックの合同取り締まりを行った。国道49号沿いにある阿賀町の津川除雪ステーションで、過積載をはじめ、主に特殊車両を対象に違反車両を検査した。 2時間で12台を調べ、うち4台に警告書を発行。特車許可の期限切れ、通行経路の許可申請無し――などが確認された。過積載は無かった。 新潟国道事務所水原維持出張所の中波政志所長は「2015年度初の取り組みになる。過積は重大事故を引き起こす危険性を含む。道路の老朽化で、特に橋りょうには大きな負担が掛かっている」と説明。 加えて「14年度は6、8、10月の計3回行い、10台の違反車両が見付かった。道路の安全を確保するために、協力をお願いしたい」と呼び掛けた。 管理第一課の村岡浩二課長も「15年度は、合同取り締まりを1回増やす計画。違法行為を無くすため全力を尽くす」と強調した。(渡辺耕太郎) 【写真=2時間で4台に警告書を発行】
【三重】新成運輸(村木尚哉社長、三重県四日市市)本社営業所は6月10日付で、念願のグリーン経営認証を取得した。 3年前に顧客から取得を勧められ、本格的な取り組みをスタート。デジタルタコグラフを活用した燃費管理は以前から行っていたものの、村木社長は「実際にやってみると思っていたより大変で、取得のハードルは高かった」と振り返る。 全車両70台の燃費データについて、「デジタコで8割程のひな型は出来上がっていたが、一つ入力漏れがあると不備になってしまう。データの照合にはかなり手間がかかった。CO2(二酸化炭素)排出量計算式の処理にも苦労した」。 保有する4トン、7トン、大型の3車種別燃費目標を立て、ドライバーに周知徹底。定期開催している安全会議に加え、日頃から燃費改善の意識付けを図った。申請に当たっては本社事務所が一丸となり、データの確認や書類作成については、女性スタッフが大活躍した。 「本社スタッフと全ドライバーの協力で、グリーン経営認証を取得できた。燃費管理には自信を持っていたが、本当に良い勉強になった。エコドライブは、事故防止と経営改善に直結する。認証取得で安心することなく、今後も取り組みを継続したい」(星野誠) 【写真=グリーン経営認証を手にする村木社長と女性スタッフ】
和束運輸(杉本哲也社長、京都府木津川市)は6月22日付で、マルコーエキスプレス(進藤敬之社長、京田辺市)と滋賀丸工運送(同社長、滋賀県湖南市)をM&A(合併・買収)した。買収額は公表していない。事業継承で悩んでいたマルコーエキスと事業領域拡大を検討していた和束運輸の思惑が一致。これまで培ってきた幹線輸送のノウハウに加え、チルド輸送や重量物運搬、据え付けといったサービスも展開することにより、新規荷主の開拓や既存取引の深耕につなげる。(落合涼二) マルコーエキスは1981年4月、丸工自動車運送(木原泰博社長、京都市南区)のグループ会社として創業し、重量物運搬をはじめ、倉庫、包材販売などを手掛けている。ホームページによると、従業員数75人で、大型ウイング車や大型平ボディー車、ユニック車、冷蔵車など計64台を所有。2014年10月期の売上高は5億5千万円で、滋賀丸工と合わせた売上高は7億円。 和束運輸は1957年1月に設立。2015年1月時点の従業員数が181人。2トン車、4トン車、10トン車、トレーラ合わせて128台を保有し、一般貸切自動車運送事業として小型バス1台、中型バス3台も備える。14年9月期の売上高は28億4500万円。 15年9月期は「結」を基本方針に、地域社会と共存し、安全で豊かな地域社会づくりと環境保全に努める。売上高は30億円を見込んでおり、グループ会社を合わせると36億円程度になる。 M&Aについては、14年10月から協議がスタート。「周囲からの反対もあり、足踏みが続いていた。4月に入り最終決断し、金融機関を入れて話が具体的に進み始めた」(杉本社長) 今後、マルコーエキスと滋賀丸工は和束運輸のグループ会社として位置付けられ、独立採算制で運営する。当面は、杉本社長が社長を兼任し、これから社内システムや給与体系といった管理面を整備。その後は若手を抜てきし、経営を任せていく考え。 和束運輸 1957年1月に設立。資本金1500万円。2トン車4台、4トン23台、10トン97台、トレーラ4台を保有。一般貨物自動車運送事業に加え、一般貸切旅客自動車運送事業なども手掛ける。従業員数は181人。家電メーカーや住宅機器メーカーなどを荷主に持つ。2014年9月期の売上高は28億4500万円。 マルコーエキスプレス 1981年4月に創業。資本金2400万円。大型ウイング車をはじめ、大型平ボディー、4トンウイング車、ユニック車、冷蔵車など64台を保有。従業員数は滋賀丸工運送合わせて75人。情報表示システムや産業用照明機器メーカー、乳業メーカーなどを荷主に持ち、2014年10月期の売上高は7億円。 【写真=買収した2社をグループ会社に位置付け、今後、社内システムなどを整備(和束運輸本社)】