全ト協、労働時間規制に提言 長距離輸送の実態ふまえ
全日本トラック協会(星野良三会長)は10日、「長距離輸送の実態と労働時間規制の在り方についての提言~改善基準告示等をめぐる諸問題」を取りまとめた、と発表した。北海道、東北、九州の事業者から収集した35件の運行データを分析した結果、全データで改善基準の未順守事項があることが判明。拘束時間は、原則の「1日13時間」より2時間30分も超過しており、積み下ろし先(受け荷主)での手待ち時間発生、高速道路網の未整備などが要因――としている。こうした実態を踏まえ9日、国土交通省に対し、労働時間関係基準の見直しを求める要望書を提出した。(田中信也) 【写真=(右から)福本理事長と馬渡、大高、坂本の各副会長が国交省を訪問し、要望書を提出】
【栃木】卸・流通事業者向けの3PL(サードパーティー・ロジスティクス)を手掛ける北関東物流(神成光輝社長、栃木県壬生町)は、最大規模の拠点になる鹿沼営業所(鹿沼市)を開設する。9月下旬の稼働を目指している。(佐々木健) 新拠点は東北自動車道・鹿沼インターチェンジに近い、とちぎ流通センター協同組合(関口快流〈かいりゅう〉理事長)内に設置。敷地面積6500平方メートルで、鉄筋4階建て、延べ床面積8700平方メートルの倉庫・事務所棟を置く。積載荷重1トンの垂直搬送機2基と同1.5トン1基のほか、入庫や搬出用の高床ホームを2面に備えている。 1階部分は千パレット収容可能な大型ラックを置き、ケース単位で出荷するセンター向け作業エリアと、店舗向けの在庫保管エリアとする。2~4階では、店舗向け出荷のピッキング作業を行う。庫内作業に無線LANピッキングカートを導入。荷主の在庫管理や受発注機能とリンクした在庫管理システムを設置する。 扱う貨物は、近隣に位置する宇都宮営業所(宇都宮市)から移管。同営業所はトラック25台を保有、2階建ての倉庫で、日用雑貨や医薬品、紙製品を扱っている。 このうち、家庭用品やアパレル品など日用雑貨類を新拠点に移し、宇都宮営業所と補完的に業務を展開。鹿沼営業所では流通加工に特化し、輸配送は宇都宮営業所で対応する。配送エリアは南東北から関東一円。 とちぎ流通センター協組は、1988年に流通機能を集積した団地として造成された。以前は卸・運輸・倉庫の3区画に分割され、それぞれの区画に異業種が参入できないよう規制が掛けられていた。近年では、3PLなど包括的なサービスが伸長し、規制が時流に合わないことから、2014年11月に区画制限を撤廃した。北関東物流は緩和後初の企業として、かつての卸区画に入居する。 【写真=扱う貨物は、近隣に位置する宇都宮営業所から移管】
「3台の冷凍車は廃車となり、積んでいた荷物の弁償金8千万円はとりあえず立て替えへ」――。北海道苫小牧沖で発生した大型フェリー「さんふらわあだいせつ」(商船三井フェリー所有)の火災事故で被害のあった札幌定温運輸(伊藤邦博社長、札幌市西区)では、事故の対応に繁忙期が重なり、お手上げ状態となっている。(那須野ゆみ) 室蘭港にえい航されてようやく鎮火したフェリーから、トラックやシャシーが降ろされたのは8月17日。フェリー会社から連絡を受けた同社は、すぐに担当者を派遣し、確認した。 担当者からの報告によると、「荷台の扉を開けたら腐敗臭がすごかった」らしいが、「写真だけを見ると、箱詰めされた冷凍品は何事も無かったかのようだった」(伊藤社長、62)。 冷凍車を修理して使用できるかどうかディーラーに見てもらったが、「消火に当たって塩水をかぶっており、修理してどの程度走行できるか保証できない」と言われた。やむなく3台のトラックは「廃車」とし、新車3台を発注したものの、「納車は来年2月か3月になる」という。 火災後、ドライバーには自宅待機してもらっている。3台のほかにも、長い付き合いだった傭車先のトラックも焼け、「荷物を運ぶのに苦労している」。 伊藤社長は「繁忙期を控え、お手上げ状態。今のところは荷主の理解もあって何とかやり繰りしているが、それも限界にきている。窮余の策として、廃車にしようとしていたトラックを使って乗り切るしかない」考えだ。腐敗した冷凍品およそ77トンは、フェリー会社が廃棄処分してくれた。しかし、荷主に支払う「預かり貨物の弁償金」約8千万円は、本来の請求先がまだ明らかになっていない。このため、9月末にとりあえず立て替え払いするが、いつ、どこから、いくら返済されるのか、見通しは立っていない。 【写真=火災事故に巻き込まれて、車体が焦げた冷凍車】
【静岡】8月29日に行われた陸災防静岡県支部のフォークリフト運転競技県大会で、静岡第一テレビのカメラが女性選手を撮影する場面が見られた。 「物流現場で働く女性をテーマとした特集取材を続けている」とのことで、浜松倉庫(中山彰人社長、浜松市中区)の金田莉彩さん(20)に密着。同社にも訪問し、女性による荷役作業の様子や現場採用の状況などを追っている。 金田氏を中心に、エントリーした女性6選手の操作技術を収録。残念ながら金田氏は5位で、全国大会出場の機会を逃したものの、「初めての挑戦ですごく緊張したが、終わってほっとしている。爪をパレットに差し込む時にこすってしまい悔しい。また挑戦したい」とインタビューに応えていた。 取材に当たった静岡第一テレビの記者は「物流現場に女性の進出が多くなり、年齢の若い層も増えていると聞き、金田さんを中心に取り上げさせてもらった」と説明。 しかし、「トラック運送を含めた物流現場の人手不足が問題化していることが分かり、単に女性の物流現場進出の増加を捉えるだけでは良くないと感じた。テーマの方向性の変更も視野にして、労働局など関連機関やトラック協会に現況を聞き、もっと深掘りした取材が必要と感じた」と強調していた。(奥出和彦) 【写真=カメラの前でインタビューを受ける浜松倉庫の金田選手】
【東京】八武崎運送(八武崎秀紀社長、東京都江戸川区)は軽貨物運送事業に新規参入する準備を進めている。インターネット通販がけん引するBtoC(企業-消費者)の市場に切り込むのが狙い。2016年9月期中に宅配サービスを担う専門部隊を立ち上げるほか、必要に応じて拠点も新設する。 大手流通事業者が展開しているネットスーパーの宅配業務の受託を皮切りに、未踏の領域に踏み出す構想。将来的な事業の拡大に向け、ノウハウとスキルの蓄積に努めていく。 BtoCの分野はドライバーの質が事業の成否を大きく左右するため、優秀な人材の確保と教育制度の充実・強化が不可欠と規定。運賃は2万円を最低ラインに据えるとともに、長時間労働の防止などコンプライアンス(法令順守)の徹底を図り、老若男女を問わず意欲的な配送スタッフを募る。 15年9月期の売り上げは10億円(14年9月期は8億円超)の大台突破を視野に入れる。16年9月期も拡大成長路線を継続する方針で、ドラッグストア物流業務の新規受託などにより、15年9月期比で5%の増収を目指す。 八武崎社長は「BtoB(企業間)の仕事は納品先で、誰もいない状況で貨物を下ろすこともある。一方、BtoCの仕事は生活者の人たちとじかに接することができ、感謝や励ましの言葉をもらえることもあるだろう。それを喜びに変えられれば、宅配事業は必ず成功する」と話している。(沢田顕嗣) 【写真=必要に応じて拠点を新設(本社)】
【山口】しんじゅ(宮崎英雄社長、山口市)グループのしんじゅサービス(同)は、2014年8月に経営を引き継いだ「おのだラーメン六助」(山陽小野田市)で、9月から焼き芋をメニューに加えた。専用の焼き芋器を店舗に設置し、焼きたてを来店客に提供する。将来は、焼き芋の移動販売も検討していく。 しんじゅは本業の運送事業のほかに、グループ会社のパールプランニング(同)でトラックなどのプリント施工事業を手掛け、多角化を図っている。 六助は、100%国産のとんこつスープが売りで、1店舗のみの営業。さっぱりした味が受けて常連客も多いが、後継者が不在だったため、経営を引き継いだ。ドライバーや配車を担当していた上田達也氏が弟子入りし、1年半にわたって調理法などを学び、二代目店主として店を切り盛りしている。 【写真=店舗に新たに設置した焼き芋専用器】
【大阪】マツシタ運輸(大阪府東大阪市)の松下導治社長は8月20日、近鉄奈良線若江岩田駅前の岩田公園(同)で開催された盆踊り大会の実行委員長として、サンテレビの取材を受けた。 盆踊りは、同市を中心に活動している河内音頭の流派「生駒会」が主催。毎年8月下旬に行われる同駅周辺地区の夏の恒例行事として定着し、古くから伝わる河内音頭の魅力を発信するのに一役買っている。 東大阪市を含む河内地域が発祥といわれる河内音頭。その伝統文化を継承する取り組みがサンテレビ関係者の目に留まり、番組で取り上げられることになった。 インタビューを受けた松下氏は、河内音頭に対する思いなどを語り、「大阪を代表する文化として海外にも発信していきたい」と強調した。なお、インタビューの模様は13日午後1時から放送される予定。(上田理子) 【写真=河内音頭に対する思いなどを語る松下社長(中央)】
冷凍・冷蔵コンテナ、物流関連装置の販売やレンタル、リースなどを手掛けるロッコーエンジニアリング(大牟田守社長、神戸市中央区)は、積載効率をアップさせるデッキマザーラックを改良、9月から本格販売している。(落合涼二) 2010年に郵船港運(真田哲也社長、大阪市西区)から依頼された2段積み可能な架台を改良。発売から4年が経過し、ユーザーニーズを把握できたため、寸法やオプション、強度面を一層充実させ、幅広い要望に応えられるよう工夫した。 デッキマザーラックは、トラックの荷台やコンテナに置く輸送用架台。従来品は10フィートコンテナ用で、高さ855ミリ×幅2850ミリ×長さ2310ミリ。最大積載量は2千キロだった。 改良版は、コンテナとトラックのウイング用が高さ1200ミリ(±150ミリ)×幅2250ミリ×長さ3550ミリで、最大積載重量は1500キロと3千キロの2種類。ウイング車向けには、高さ1200ミリ(±150ミリ)×幅2250ミリ×長さ2410ミリのコンパクトサイズも設けた。最大積載重量は1千キロと2千キロの2タイプ。 スチール製で、製品重量は295~450キロ。折り畳み機能をはじめ、搬出入用ガイドローラーや保護ガード、高さ調整機能などが標準装備される。また、衝撃を吸収するダンパー、複数台を連結して使うための金具、フォークリフトの爪のずれ防止ポケットといったオプションも用意。 これまで、特殊部品やコイル状製品、日用小物、航空貨物、太陽光パネルなどを取り扱う物流会社が導入。また、荷主企業の依頼により採用するケースも多いという。 同社では「上積み禁止の荷物輸送時のデッドスペースを有効活用することにより、積載効率が向上し、輸送コスト削減にもつながる。併せて、梱包材の簡素化も図れる。今後も物流企業の悩みを解決するとともに、効率的な輸送を支援していきたい」としている。 【写真=デッドスペースを有効活用することにより、積載効率が向上】
安田倉庫は、保有する不動産の再開発・高度活用を進めている。2017年10月までに、横浜市神奈川区のテナントビル跡地にホテルと複合商業施設(ホテル事業用ビル)を建設、賃貸する。北海道函館市では、この「事業モデル」を既に実施しており、引き続き、収益力の高い不動産事業の展開で収益基盤の強化を図る。4日発表した。(高木明) JR横浜駅・西口エリアに立地している神奈川区鶴屋町のテナントビルを解体後、地下1階、地上13階のホテルを建設(商業施設は地下1階~地上2階部分)する。敷地面積1660平方メートル、延べ床面積は9994平方メートル。10月から解体作業を始め、竣工は17年10月の予定。完成後は賃貸物件として、ホテル運営会社などに引き渡す。 同事業は既に08年から函館市内で企画、実施している。子会社(北海安田倉庫)の本社倉庫跡(敷地面積1万100平方メートル)の再開発に伴い、ホテル(ラビスタ函館ベイ、全364室)を建設、ホテル運営専門会社の共立メンテナンスに賃貸している。同ホテルは函館ベイエリア及び赤レンガ倉庫のそばに立地し、大正浪漫(ろまん)をコンセプトとした市内最大のホテルとして高い人気を誇っているという。 安田倉庫は、今期を最終とする中期経営3カ年計画で「保有資産の開発準備を進め、不動産事業を推進する」を基本戦略の一つに挙げている。 小川一成取締役業務部長は「立地環境の変貌(へんぼう)に伴う物流施設の用途転換や再開発などを行う。周辺地域の発展との調和を図りながら、所有不動産の有効活用を進めていくものだ」と話している。 15年3月期の連結売上高は384億円(前の期比9.1%増)で、このうち不動産事業は15%程度の60億円を占める。16年3月期通期予想では、最終利益を29%減の11億5千万円と見込んでいるが、これは減損損失及び建物の解体費用などを特別損失として計上していることによるもの。 【写真=横浜駅西口エリアのホテル(完成予想図)】
【宮城】日本通運の気仙沼支店(前川哲也支店長、宮城県気仙沼市)の新社屋が完成し、8月31日から営業を開始した。保管庫付きの施設で、26日には竣工式が開かれた。(黒田秀男) 東日本大震災で気仙沼地域では甚大な被害受けた。被災者の公営復興住宅を建設する用地不足の中で、気仙沼市の要請を受けて、高台のJR気仙沼駅前にあった旧施設(用地)の売却に応じた。 移転先は国道284号沿いの気仙沼市下八瀬地区で、岩手県一関市とつながる国道284号に面し、45号バイパスにも近く、三陸沿岸部と内陸部を結ぶ交通の要衝に当たる。 敷地面積が3630平方メートル、一部2階建ての事務所と保管庫を建設、延べ床面積は640平方メートル。このうち、平屋建ての保管庫は床面積330平方メートルで、天井を高くし、幅広い需要に対応する。施設は、外灯も含め照明は全てLED(発光ダイオード)を採用した。新店舗には、同支店に加え、実動部隊となる日通気仙沼運送(門間純一社長、気仙沼市) が入居する。車両は36台、ドライバー37人とスタッフが入り、気仙沼市周辺の宮城岩手両県をカバーする。 川支店長は「これからも地域に密着したサービスを提供していく。交通の要衝というアクセスを生かし、顧客ニーズに的確に対応するとともに、物流を通して地域の復興にも貢献したい」と話している。 【写真=外灯も含め、照明は全てLEDを採用】