チーフプロデューサー/矢島孝氏、「空飛ぶタイヤ」6月映画化 経営者の苦悩描く
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2018/01/01 0:00
「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」など数多くの作品がドラマ化され、注目を集める作家、池井戸潤氏のベストセラー小説『空飛ぶタイヤ』(講談社文庫/実業之日本社文庫)が同氏の作品では初めて映画化され、6月15日から公開される。 自社のトレーラが起こした脱輪事故で、整備不良を疑われたトラック運送会社の社長が「車両の構造そのものに欠陥があるのでは」と大企業に立ち向かっていく――全国のトラック運送事業者の共感を呼んだ大逆転エンターテインメント。運送会社社長を演じる主演の長瀬智也さんをはじめ、主役級の豪華キャストを配した重厚かつテンポの良い群像劇、ヒューマンドラマへの期待は高い。 「かなり前から池井戸作品を映画化したいと考え、当初、別の作品で企画していたが、池井戸さんから『この作品を』と提案された」――。配給元である松竹で同作品のチーフプロデューサーを務める矢島孝氏(58)は、数ある作品から『空飛ぶタイヤ』に決めた理由を説明する。 池井戸氏は「ぼくは、この物語から『人を描く』という小説の根幹を学んだ」と話すほど思い入れの深い作品だが、文庫本(講談社版)で全900ページを超え、登場人物が多数に上る「超大作」の映画化は「容易ではない」というのが矢島氏の本音。事実、製作開始当初は、かなりの「紆余(うよ)曲折があった」ようだ。 しかし、主演の赤松運送社長・赤松徳郎役に長瀬さんが決まったことで、他のキャストも固まり、それからは「とんとん拍子で進んだ」。長瀬さんに白羽の矢を立てたのは「熱さが第一だが、深みも感じさせ、従業員の兄貴分的な役割にぴったりだった」から。実際、怒りや憤り以上に、会社存続の危機に直面する経営者として「苦悩するシーン」が多くを占めており、「(長瀬さんの)新境地が開かれたといえるのでは」と話す。 また、監督には「超高速! 参勤交代」シリーズなどで「多数の登場人物を裁くことに長けた」本木克英氏を起用した。 共演者は「画面に出てくるだけで性格や置かれている立場が分かる人を選んだ」と強調するように、赤松と対峙するも、自社の隠ぺいの事実に気付き、自らの正義と大企業のサラリーマンとしての立場に揺れる、ホープ自動車カスタマー戦略課課長の沢田悠太役にディーン・フジオカさん、同社の経営計画に疑問を抱き、調査を進めるホープ銀行の本店営業本部のホープ自動車担当・井崎一亮役の高橋一生さん、といった、適材適所のキャスティングに努めた。 こうした個性豊かな出演者が「それぞれの立場、自らの正義で闘っていく」ことが作品最大のみどころ。また、撮影やセットの考証などで、トラック運送事業者の協力を得ており、「営業所の内部は細かいところまでリアルに再現しているので、ディテールに注目して欲しい」と話している。 矢島氏は「大企業対中小企業という構図が注目されるが、各々が所属する組織での立場と自分の生き方との確執が織りなす人間劇」が作品のベースと強調。「日本経済の根幹を成す物流を支えながらも、厳しい経営局面に立ち向かっている運送会社の経営者にぜひ作品をみて欲しい」 (田中信也) 【写真=「運送会社の経営者にぜひ作品をみて欲しい」と矢島チーフプロデューサー】