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ホワイト物流 賛同の輪(12)/ベイシア、入荷予約で車両待機減 庫内作業を可視化・計画化

荷主

2020/06/23 0:00

 北関東を中心にショッピングセンターを展開するベイシア(橋本浩英社長、前橋市)は、ホワイト物流推進運動に賛同し物流改善に取り組んでいる。トラックドライバーの待機時間を短縮するため、2月から前橋流通センター(同市)に「入荷予約システム」を導入。1日当たりの入荷車両台数を30~40台に平準化し、待機時間が30分以内に収まるようにした。庫内作業者にとっても時間のメドがつけやすくなり、「ムダ・ムリ」の無い作業を実現。今後、協力会社と協議の上、他のセンターへの導入を検討していく。(中西祥梧)

【写真=搬入量の平準化を図るため需要を予測した自動発注システムを導入】  

従来、荷受けは午前8時から行っていたが、流通センター内で待機するトラックが1、2時間経過しても「全く進まない」状態が続いていた。成り行きに任せていた部分もあり、当日にならないと車両台数が分からず、各車両が来たい時に来る状態だった。

 そこで、車両の待機時間を減らすため、入荷予約システムを採用。生産性改善事業部の大沢正樹部長は「モノを購入していただき、お客さまに喜んでもらうのが最大の使命。安く売るためには、安く仕入れる必要がある。例えば、30分で完了する荷下ろしに2時間要していたら、人件費が高くなってしまう。安く売るための原価低減策の一つだ」と話す。

 同時に課題も残されている。例えば、午前8時に予約をしたい車両が複数ある場合、希望通りにならず予約時間が後ろ倒しになる車両が出てくる。その中には、予約が取れなかったものの、午前8時に入場して待機する車両もあり、待ち時間が発生してしまう。何時に荷下ろしすると効率が良いか、話し合って最適解を見つけ出す作業を進めている。

搬入量平準化へ

 また、物量の変動を抑えるため、発注量の平準化にも取り組む。ショッピングセンターは通常、平日より土曜・日曜日の方が来客数・売り上げが多くなり、搬入する物量も増える。そこで、搬入量の平準化を図るため、需要を予測した自動発注システムを導入。水曜・木曜日に分散して運ぶなど新たな試みを模索している。更に、飲料品やインスタント食品などは毎日運ぶ必要があるが、衣料品や日用品などは配送日を決め、配送頻度を下げて実施するようにしている。
 同社は現場の声を聞くため、協力会社と定期的に会議を行い、流通センター内の「情報の可視化」「基準の策定」を促進している。以前は当日の出荷数が分かっていても、作業にかけた人数や時間、生産性といったデータが「何も無い」状態で、KPI(重要業績評価指標)分析を行っていなかった。現在は庫内作業の「可視化・計画化」に向け、改革を実行中。今後も作業員1人当たりの作業実績の分析を進め、方法や手順などの仕組みを構築していく。
 大沢氏は「同運動は宣言して終わりではなく、スタートラインに過ぎない。全体最適に目を向け、物流のプロと小売りのプロが相互に理解を深めていくことが重要だ。今後、人口減少や少子高齢化が進むにつれ、給与を上げたからといって働き手が集まるとも限らない。物流品質の向上も不透明だろう。実店舗に勤務している社員の作業改善を最も重要視しているので、そこから逆算しながら『小売業の流通センター』としての改善を進めていく」と強調する。


 ▼ベイシア 1958年、前身となる「いせや」を設立、97年に現社名へ変更。北関東を中心に1都14県に142店舗を展開し、食料品や衣料品、生活用品など幅広い商品を取り扱う。自前の物流センターは前橋市と千葉県東金市の2拠点。また、スポーツ専門店「ベイシアワールドスポーツ」、小型店「ベイシアマート」、衣料品専門店「ベイシアファッション・everywear」などを持つ。従業員数1万321人。2020年2月期の売上高は2887億円。 


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
※本紙2020年3月17日付掲載
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)





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