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全ト協、労働規制に備え 「拘束」「時間外」理解しやすく 今秋 行動計画の解説書策定

団体

2018/07/19 0:00

 働き方改革関連法が成立し、2024年4月から自動車運転業務に罰則付き時間外労働規制が適用されることを受け、全日本トラック協会(坂本克己会長)は今秋にも働き方改革の実現に向けたアクションプランの解説書を取りまとめる。長時間労働是正に取り組んでいくものの、上限規制の特例である年間960時間の「組み立て」をいまだ理解していない事業者が多いため。一方、厚生労働、国土交通の両省は、自動車運送業界の労使と連携し、改善基準告示の見直しなど必要な施策の検討を進めていく。(田中信也)  労働基準法改正案など八つの法案を一本化した働き方改革関連法案の国会審議は、高度プロフェッショナル制度の導入を巡り、与党と主要野党が最後まで激しく対立。そのため、厚生労働委員会の審議では、衆院で12項目、参院では過去最高とされる47項目の付帯決議が採択された。  自動車運転業務への罰則付き時間外労働規制の適用については、立民、国民など野党側の懸念や要望を踏まえ、厚労省や国交省、トラック運送業界の労使などが今後取り組むべき課題が多く示された。  衆院の付帯決議では、5年間の猶予後に年間960時間の特例を適用するまでの間、過労死防止の観点から改善基準告示の見直しを行うことを採択。一方、野党と政府による議論が深まった参院では、改善基準で定める年間最大拘束時間3516時間が「時間外上限特例(960時間)とのダブルスタンダードになる」(石橋通宏氏、立民)といった野党側の指摘を踏まえ、「告示で定める走行時間について、関係省庁と連携して速やかに改善を検討する」ことを明示した。  このほか、付帯決議には①5年間の猶予期間中も時間外労働削減に向けた実効性ある取り組みを関係省庁・団体が連携して推進②休日労働を含まない年間960時間の特例から、できるだけ早く一般則(年間720時間)へ移行できるよう関係省庁や労使、荷主を含めた議論を加速③一般則の全面的な適用が困難な場合、一部の事業・業務で先行的に適用――など、実効性を担保するための措置が多く盛り込まれた。  月平均80時間の時間外労働を「過労死ライン」と指摘し、年間拘束時間を最大3300時間へ短縮するよう求めていた運輸労連(難波淳介委員長)は、同法の成立に対して「『休日労働を含め月平均80時間以内の適用』といった要請は認められなかったものの、衆参の付帯決議に多くの(自動車運転業務に関する)項目が盛り込まれた」と評価している。  また、付帯決議には「早朝・深夜、交代制、宿泊を伴うなどの多様な勤務実態、危険物の配送といった業務の特性を十分に踏まえ、(厚労相の諮問機関である)労働政策審議会で議論し、実態に応じた基準を定める」ことを明記。これに対し、全ト協の松崎宏則常務は「『決して物流を止めない』との決意を示した上で、多様な勤務実態などへの配慮も明記していることは素晴らしい」と高く評価する。  夜間・長距離運行が多い地方の事業者の実態も踏まえた柔軟な対応は「労使で利害が一致している」と指摘。改善基準などの見直しに当たっては、勤務実態や業務特性を詳細に調査した上で、課題を洗い出していく必要性を強調している。  一方、全ト協は時間外上限規制に対応するための長時間労働是正に向け、3月策定のアクションプランに盛り込まれた取り組みを推進。19年4月の労基法施行から3年目となる21年度には、時間外労働が年960時間超の運転者がいる事業者の割合を全体の25%まで引き下げ、これを皮切りに段階的に減らし、規制が始まる24年度までにゼロを目指していく。ただし、「年960時間の時間外上限など労働時間の構造を理解していない事業者が多い」ことから、アクションプランの解説書を策定する。  解説書では、法定労働時間や拘束時間と時間外労働の関係性などを分かりやすく説明し、年960時間の上限規制に対する理解を深めていく方針。今秋開催予定の「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」で、都道府県単位で16、17年度に取り組んだパイロット事業のガイドラインと併せて公表することを検討している。  改善基準は、年960時間の特例適用を前に見直すことが付帯決議で求められているが、厚労省は19年4月の労基法施行に向け、関係政省令の制定や高プロ制度の対象業務、年収要件などの制度設計を優先する方針。このため、改善基準の見直しに向けた検討が実質的にスタートするのは、19年度以降になる見通しだ。審議に当たっては、1989年に告示を出す際、建議から3年弱の期間を要したように、慎重な協議が求められる。 【写真=参院厚労委の付帯決議は過去最高の47項目に及ぶ(6月28日)】





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