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賃金のルールを知ってトラブル対策⑨ 保険サービスシステム/第三コンサルティング部長 馬場栄 出来高給や賞与で支給

その他

2015/04/23 0:00

 この連載では、中小運送業の経営者が最低限知っておきたい賃金のルールを紹介していきます。今回は、手当の見直し方法について考えてみましょう。  ドライバーの給与では、基本給のほかにいくつも手当がつくのは珍しいことではありません。ただ、昨今、手当が多いことのメリットは少ないといえるでしょう。  基本給を低く設定し、手当を多く積み上げるということは残業代対策とはなりません。残業代計算の対象としなければならない給与の種類は、「毎月の通常の労働の対価となるもの」と定められており、これにほとんどの手当が該当します。基本給のみを残業代計算の対象とする、ということはできないのです。  ドライバーにとっても、手当が多いために、どの手当が、どんな理由で支給されているのか、わかりにくくなっているかもしれません。納得できない給与は不満を生み出します。  そこで、一度すべての手当について、その性質や支給理由を見直してみてはいかがでしょうか。  「仕事への評価」について給料を支給するしくみは、ドライバーのモチベーションを高めるために残しておくべきです。見直しでは、「これはどうしても手当で支払いたい」というものだけ残し、その他の手当は、廃止するか、もっと合理的な支給方法に切り替えるのです。  その支給方法の1つが出来高給です。「長距離手当」「荷卸手当」「資格手当」など、ドライバーに関する仕事関連の手当の多くが、作業の種類、運ぶ距離、技術力など「行った仕事や結果(量・成績など)」への評価として支給されます。これらは「会社が決めた労働時間のなかで行う仕事」として固定給で支払うよりも、「労働時間に関係なく成績に応じた」出来高給として支払うほうがしっくりくる場合があります。  出来高給は、最低賃金の確認の計算方法や割増賃金の計算方法が固定給とは異なります。  また、賞与という支給方法もあります。  運送業以外の業界では、「行った仕事や結果(量・成績など)」への評価は、賞与で支給されるのがごく一般的です。賞与は、最低賃金の確認、残業代計算の対象賃金には含めません。月々の残業代計算などには影響せず、給与計算はよりシンプルになります。  出来高給も賞与も、働いて結果が出れば、その分給料が増えるという制度です。手当の見直しをきっかけに、荷主から情報を入手してくる、仕事をとってくる、などの新たな評価項目を、出来高給や賞与へ追加してもよいでしょう。  では手当を見直す場合、どのような点に気をつければいいのでしょうか。  手当の性質は、大きく2つに分けられます。住居費や扶養する家族の人数など、「福利厚生を目的とした手当」と、社員の能力や職務など、「仕事への対価としての手当」です。  仕事本来の対価」として手当を精査するならば、まず「住宅手当」「家族手当」などの、福利厚生目的の手当を最小にすることを考えましょう。家族が多い、家賃がかかるというだけで給料が増えるのは、仕事ができるドライバーにとっては納得できるものではありません。このような理由もあって、福利厚生目的の手当を厚くする会社は全般に減少傾向にあります。  仕事への対価としての手当」では、見直しの筆頭に挙げたいのが「精皆勤手当」と無事故手当」です。  精皆勤手当」は、最低賃金の計算をする際には「毎月支払われるかどうか確かではないから除外」し、残業代計算の対象としては「労働の対価だから含める」というものです。他の手当とは性質が異なるので、会社にとっては使いにくい手当といえます。  無事故手当」は、「毎月の給料が違ってくるから、ドライバーが緊張感を持って運転する」「無事故手当をなくすと事故が増える」と、その必要性を感じている経営者の方も多いです。ただ、トラブルになりやすい要素があります。  通常は、事故を起こさなかった月に支給し、事故を起こした月には支給しないというものです。でも、なかには事故を起こしたら車両保険の免責額の上限に達するまでの数か月間、場合によっては1年以上支給しないという会社があります。このようなケースでは、実態は損害をドライバーに弁償してもらうのと変わらないとされ、ドライバー側から弁償金の返還を求めて訴えられる可能性があります。「無事故手当」を残す場合は、支給方法に注意しましょう。  なお、手当を見直し、賃金制度を再構築する際は、ドライバーに説明して合意を得ることが必要です。その際、各給与の支給理由などを明確にして、納得を引き出しましょう。





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