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物流企業
2018/11/01

物流業界の障がい者雇用、雇用率対応迫られ 法令順守&戦力確保へ 就業体験で家族も納得

t.kokudo
物流ニッポン

 企業に一定数以上の障がい者を雇用するよう義務付ける障がい者雇用率制度の法定雇用率が、2021年4月までに0.1ポイント引き上げられることから、物流企業は対応を迫られている。しかし、道路貨物運送事業などを含め物流業界では、(精神障がい者などで)自動車免許の取得が難しいことや、郊外の勤務地が多いことから、障がい者雇用がなじまない側面もある。一方で、障がい者は在庫管理や仕分け、ピッキングなど「倉庫内作業の戦力として活躍している」との声も上がっており、人手不足にあえぐ物流業界では、法令順守と戦力確保の「一石二鳥」に向け、環境整備が求められそうだ。(辻本亮平、高橋朋宏、梅本誠治、上田慎二)
 ヤマト運輸(長尾裕社長、東京都中央区)では、法定雇用率をおおむねクリアする人数を雇用。正社員・パート社員を含め、事務、乗務、作業など、様々な職域で障がい者が働いている。その中には、重度~軽度の知的・身体・精神障がいの者が含まれる。
 独自の取り組みで雇用を進める企業もある。吉正運輸倉庫(吉野元康社長、名古屋市北区)では、障がい者を対象とした「就労移行支援事業」を行っている。採用を担当する日野原由美子部長が、ハローワークで就労支援担当の指導官と相談し、自社の業務を精査した上で職場見学を実施。精神障がい者を含め、適切なマッチングにつなげた。
 また、総合物流サービスの丸野(野上龍彦社長、長崎市)を中核とする丸野グループでは、長崎県立希望が丘高等特別支援学校の卒業生を定期的に採用。生徒の在学中に、入社前インターンシップ(就業体験)で複数回、職場へ受け入れる。本人や家族に納得して入社してもらうことで、ミスマッチを防いでいる。入社後のサポートも手厚く、職場内訓練(OJT)で適性を見極めつつ、ステップアップできる体制を整えている。
 物流業界では、障がい者の雇用が難しい側面もある。精神障がい者などは自動車免許の取得が難しく、ドライバーとしては働きにくい。「誰でも働ける職場環境を整えるには、各職場での工夫が必要」(ヤマト運輸広報戦略部)となる。また、「勤務先は郊外が多いが、通勤に車を使えない。そのため、徒歩や自転車、公共交通機関に頼らざるを得ないが、それに対応できる人は少ない」(日野原氏)のも課題だ。
 一方で、倉庫作業者として活躍しているケースは多い。丸野では、社員として迎えた障がい者全員が在庫管理や仕分け、ピッキングなどで高い能力を発揮。16年以降、4人を雇用しているが、退職者は出ていない。吉正運輸倉庫でも、倉庫内作業などの戦力として活躍している。ヤマト運輸広報戦略部でも「正確に仕事に励み、ひたむきで真面目な人が多い」と強調する。
 障がい者雇用について、日野原氏は「戦力になるメンバーの一人として受け入れたことで、社内の雰囲気が良くなった」と強調。「障がい者であっても、一緒に会社の利益を上げていく一員と考えている。戦力として働いてもらえるよう社内の環境整備を進めている」
 また、ヤマト運輸が「障がいを持つ社員のために小さな工夫を続けることで、職場の雰囲気が良くなったり、周囲の社員にとっても働きやすい環境になったという声を聞く」(広報戦略部)としているように、障がい者雇用を進めるための職場環境整備が他の従業員に良い影響を与えるケースも多い。
 政府が掲げる障がい者雇用の促進では、対応できない場合、ペナルティーが科せられる。納付金という「逃げ道」はあるものの、企業には社会的責任もある。法定雇用率を「ノルマ」と捉えず、障がい者の能力を引き出せるようマッチング体制を整えるなど、法令順守と戦力確保につながる対策が求められる。
【写真=在庫管理や仕分け、ピッキングなど「倉庫内作業で高い能力を発揮」との声も(イメージ写真)】

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