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行 政
2017/08/10

国交省、改正運送約款 11月施行 積み付けなど定義明確化 指定時間前到着 待期に含まれず

t.kokudo
物流ニッポン

 国土交通省は、標準貨物自動車、標準貨物軽自動車の両運送約款と、トラック運送事業における書面化推進ガイドラインを改正し、11月4日から施行する。運送の対価として「運賃」を明確化し、積み込み・取り卸し(積み下ろし)料など料金の具体例を規定することで、トラック運送事業での適正運賃・料金収受を後押ししていくことが狙い。トラック業界からは歓迎の声が上がる一方、荷主への周知・徹底が困難との見方も少なくない。行政やトラック業界団体のバックアップ、個々の事業者と荷主による施行後の取り組みが成否のカギを握る。(田中信也、今松大、河野元、小菓史和、江藤和博)
 4日、改正した両運送約款と書面化推進ガイドラインを公布。厚生労働省と共同で設置したトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会の下に、トラック運送業における適正運賃・料金検討会(藤井聡座長、京都大学大学院教授)を立ち上げ、協議結果を踏まえて改正した。3カ月の周知期間を経て、施行する。
 約款改正により、運送の対価となる「運賃」以外の役務の対価を「料金」として明確化することで、適正収受できる環境を整備。積み込み、積み下ろしにかかる対価を「積み込み料」「取り卸し料」、荷待ちについては「待機時間料」とした上で、運送状への記載事項の具体例として規定。荷物の①横持ち②縦持ち③棚入れ④ラベル貼り⑤はい作業――などは、付帯業務として位置付けた。
 併せて、書面化推進ガイドラインも一部改正。運送引受書の必要記載事項では、料金の具体例として「待機時間料」「積み込み料」「取り卸し料」「付帯業務料」などを追加し、これらの定義を記載要領に明記。更に、運賃を「貨物の運送(場所的移動)に対する対価」とした。
 標準運送約款の一部改正に向けては、6月9日~7月9日に告示案を公示し、意見を募集。その結果、積み付けと積み込み、取り卸し、横持ち、縦持ちの定義の明確化を求める意見が複数上がった。
 国交省は意見募集結果をまとめ、こうした意見に対して回答。積み付けは「運送事業者の責任で行う運送行為の一部で、運賃に含まれる」、積み込みと取り卸しが「発着荷主の依頼で行うもので、料金収受の対象」、横持ちと縦持ちについては「一般的に発地または着地で事業者が倉庫まで手や輸送機器を使用して貨物を移動する作業」と、それぞれ説明した。
 また、「指定時間前に到着した場合の待ち時間は『待機時間』に含まれるか」との疑問には、待機時間は発着荷主側の責任により待機した時間であって、指定時間前の到着によるものは「待機時間に含まれない」との解釈を示した。
 更に、「入出庫が集中すると待機が発生してしまうのは、荷主の責任範囲ではなく不可抗力」との指摘に対しては、発着荷主の責任を改めて強調した上で、「あらかじめスケジュールを調整する手法も有効」との考え方を示した。
 トラック運送事業者のおよそ3割が付帯業務料や車両留置料などの料金を十分に収受できていない実態を受け、運送契約の際の基本的なルールを定めた標準運送約款の改正に踏み切ったことは、物流2法改正によるトラック運送事業の規制緩和以降では異例の措置といえる。
 湖南運輸(滋賀県栗東市)の中西栄社長(60)は「運賃と料金の明確化は適正運賃収受に向けた大きな一歩」と評価。藤善運送(岩手県矢巾町)の安江由喜雄社長(66)も「単純に(荷主に)運賃値上げを要求しても難しい状況なので、歓迎したい。物流クライシス(危機)が話題になっている今がチャンス。逃してはならない」と期待を込める。
 一方で、「約款改正は、やらないよりはやった方が良い。ただ、昔と違い事業者数や車両数がとんでもなく増えており、改正内容を周知徹底するのは難しい」(山田秀一・北陸貨物運輸社長、64、金沢市)、「期待はするが、同じような動きは過去にもあった。実効性が上がっていないので、当てにはしていない」(山本洋介徳山通運専務、50、山口県周南市)、「国が動いてくれたことはありがたいが、我々のような中小事業者まで恩恵が浸透するか疑問」(近畿の機器輸送事業者)など、効果に懐疑的な声が少なくない。
 松田商事(滋賀県甲賀市)の松田直樹社長(52)は「荷役料や待機料込みだったこれまでの運賃を、運賃と料金に分割して表記するだけでは何の意味も無い」と強調。中西氏も「荷主の理解と協力を得られなければ、絵に描いた餅で終わってしまう」と指摘し、「国交省が経済産業省や荷主団体に協力を働き掛けるなど、約款の順守を担保する施策をお願いしたい」と、約款改正後も行政が主体的に取り組むよう求めた。山本氏も「行政がもっと強制力を持って対応すべき」と釘を刺す。
 また、松田氏は、約款順守には「荷主の協力が不可欠」とするとともに、荷主に対して立場の弱い中小事業者に「行政が後押し」するよう要請。更に、「『うちは従来のまま(の運賃体系)で構わない』と契約獲得に走る事業者を出さないよう、業界が足並みをそろえる必要がある」と訴えた。
 一方、告示案に対する意見では「付帯業務費を支払わない荷主を『ブラック荷主』と位置付け、公開してはどうか」との提案があった。これに対し、国交省は荷主名の公開に関しての回答は避けつつも「改正した標準運送約款の周知徹底を図っていく」ことを強調した。施行後、実効性を上げるよう国交省が責任を持って取り組むことへの期待は大きい。
 今回の約款改正は、「サービス=無料」との荷主側の認識を改める絶好機であることは間違いない。「運賃と料金の別建て収受を改めて徹底し、荷主に約款の存在を認識してもらうことが必要」(大川孝夫大亀運輸社長、70、岩手県紫波町)、「しっかり取り組んで荷主への理解を進めることが重要」(佐々木和彦岩手糧運社長、46、矢巾町)と約款改正の意義は理解されており、チャンスを生かすも殺すも、最終的には運送事業者と荷主の交渉に掛かってくる。
【写真=トラック運送事業での適正運賃・料金収受を後押ししていくことが狙い(イメージ)】

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